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【みかん農家特集】みかん栽培にAIを活用——会社員から”知の農家”へ

AIと共に未来を拓く——トヤマミカンの挑戦

静岡県浜松市、日本有数のブランドみかんの産地「三ケ日」。この伝統の地で、挑戦を続ける一人の農家がいる。トヤマミカンこと外山哲氏だ。外山氏のみかん栽培は勘や経験だけではない。AIを駆使し、みかんの新たな可能性を追求する”知の探究者”だ。かつて彼は、地元の企業で働く会社員だった。なぜ、安定した職を捨て、農業の道を選んだのか。なぜ果樹栽培に、最先端のAIを掛け合わせるのか。その原点にある情熱と、緻密に計算された戦略に迫っていく。

農業を始めるきっかけ

農園の様子

 

農業を始めるまでの流れを教えてください。

「実家は祖父の代から兼業でみかん農家をしています。
実家が農家ということもあって農業高校、農林大学校を卒業したのですが、『農業は儲からない』というイメージで地元企業へ就職しました。
当初はやりがいを持って働いていましたが、順調に出世していく中でストレスで病んでしまい不眠症になってしまいました。
結婚してまだ子供の小さく、このまま潰されるのではないか、生き方を変えないと思い立ちました。」

 

そこからなぜ農家になろうと思ったのですか?

「休みの日に畑で農作業をしていると、精神的にすごく楽になりました。
屋外での作業が精神的に良くて、2か月もしないうちに不眠症も改善しましたね。
その時、『もしかしたら自分は農業をやりたいのではないか』ってことに気が付きました。」


栽培について

みかん栽培について特色などあれば教えてください。

「会社員時代に仕事で体調を崩したという経験もあるので余裕を持って働きたいと考えています。
手抜きにならない程度に手を入れない栽培を心がけています。」

 

具体的にはどのようなことですか?

「草生栽培といってあえて下草を生やす栽培方法をしています。
背丈が低く、冬に枯れる草を選んで生やしています。
除草の手間が省けるし、冬に枯れるので堆肥として土壌に有機物を補給してくれるというメリットがあります。」

 

除草作業がないのは労力の大きな軽減になりそうですね。

「その他にも摘果という幼果を間引く作業をほぼやりません。
みかんはたくさん果実がなっていると樹に着果ストレスがかかって食味が良くなります。
もちろん果実が大きくなりにくいというデメリットもありますが、最近は小玉みかんが好まれているのでSサイズを狙って生産しています。」

 

栽培に関して、こだわりやチャレンジしていることはありますか?

たくさんあります(笑)
最も心がけていることは完熟に近づけて一番美味しい状態でお客様の元へ届けることですね。
また、枝を誘引して美味しいみかんができる枝の角度に調整しています。
その他にはAIで資材の組み合わせをシミュレーションして、最も効果的な方法を模索しています。近年はバイオスティミュラントという『植物に刺激を与えて本来持っている力を引き出して収量や品質を向上させる資材』が多く開発されているので色々試すことができて楽しいです(笑)

AIの活用

AIを活用しているのですね。

農業は多岐に知識が必要なのでわからないことがあればAIで直ぐに調べます。
例えば商品名を付けるときもAIを参考にしています。
完熟させたシークワーサーを「完熟シークワーサー」という商品名で販売していました。
しかし、何をもって「完熟」と証明できなければ優良誤認表示となり景品表示法違反になります。
AIを使って調べたところ「12月収穫 完熟シークワーサー」という商品名なら違反にならないことがわかりました。

なるほど。
景品表示法は知識が無いと難しそうですね。

論文の検索にもAIを使用しています。
日本の柑橘栽培の95%はカラタチという台木を使用しています。
カラタチは果実品質が良くなりますが、樹勢が弱いため近年の異常気象に耐えれないのではと考えました。
AIを使用して日本の柑橘栽培の台木の論文を調べたところ『シークワーサー』と『スイングルシトロメロ』が生育が早く、収量も良く、果実品質も悪くないという考えに至りました。
2年前から準備してシークワーサー台木とスイングルシトロメロ台木の苗を今年定植。
予想通り生育が早いので3年後には収穫できるのでは期待しています。

今後の目標

今後の目標はありますか?

「会社員時代に仕事で体調を崩したという経験もあるので働きづめにならないように規模を拡大していくことです。」

 

3人のお子さんのためにも体調優先で。

「子供たちには『農業って楽しいんだ』っていう姿を見せたいですね。
自分の父親には『農業が楽しいということを何で教えてくれなかったんだ!』って少し恨んでいます(笑)
一番の目標は3人の子供のうち誰から跡を継いでくれることですね。」

まとめ:AIは、農業の未来をどう変えるか

会社員時代の経験から心身の健康を第一に考え、「手をかけすぎない」合理的な栽培法を確立した外山さん。そこにAIという新たな武器を加え、勘と経験の世界だった農業をデータとロジックで再構築しようとしています。

彼の挑戦は、伝統ある三ケ日みかんの新たな可能性を示すだけでなく、次世代の農家にとっての新しい働き方、そして農業の楽しみ方を提示しています。

“選べる柑橘接ぎ木NFT”プロジェクト

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