【第1弾】挫折と転換 ― 農家がAIと”経営コックピット”を作るまで

連載
📊 kamokobuさんの経営コックピット

Vol.1

農家の声
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【第1弾】挫折と転換 ― 農家がAIと”経営コックピット”を作るまで

〜 Python独学、生成AIの限界、3回の挫折を越えた先に見えた「自分の土俵で戦う」という答え 〜

「今年は儲かったのか、決算書が来るまで分からない」──その問題を解決するために、農家がAIと向き合い始めました。今回、第1回目の記事では、挫折と試行錯誤を経て「農業経営コックピット」が生まれるまでの話です。


「今年は儲かったのか」が決算書を見るまで分からない ―― 多くの農家が抱えるこの問題に、会計事務所出身の農業法人理事が真正面から挑んだ。

Python独学の挫折、生成AIへの期待と失望、そしてAIの進化がもたらした”逆の混乱”。3回の挫折を経てたどり着いた答えは、意外にもシンプルだった。会計データ×作業日報×AIで品種ごとの生産原価が1円単位で見える「経営コックピット」を独自に構築するまでをお届けします。


Vol.1
今回のテーマ

📊 「データはあったが、”見える形”になっていなかった」― 3回の挫折と転換点

会計事務所出身の農業法人理事が、品種別の生産原価を見える化するために歩んだ試行錯誤の道のり。Python独学→生成AI→AIの進化という3つのフェーズを経て、「自分の土俵で戦う」という決断に至るまで。

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🧑‍🌾 農家プロフィール

🧑‍🌾
kamokobu (かもこぶ)

農業法人理事|岐阜県|会計事務所出身

項目 内容
所在地 岐阜県
主な作物 水稲を中心に小麦・大豆・野菜
経歴 会計事務所出身 → 農業法人理事(現場管理+経営管理)。Googleデータアナリスト認定
AIツール 構築時:ChatGPT + Google AI Studio / 現在:Claude(壁打ち)+ Google AI Studio(実装)
SNS X(@kamokobu0612




kamokobuさん(@kamokobu0612)── 農業法人の理事として、現場管理と経営管理を担う。会計事務所出身という異色の経歴に加え、Googleデータアナリスト認定を取得。「数字で語れる農業経営」を追求し、AIを「最強の家庭教師であり参謀」と位置づけ、非エンジニアながら約1年のAI協業を経て「経営コックピット」を独自に構築した。現在は、同じ悩みを持つ農家に向けた農業経営コンサルティング事業「ノウカノスウジ」の立ち上げを準備中。

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📉 「データはあったが、”見える形”になっていなかった」

kamokobuさん、いきなりですが「経営コックピット」を作ろうと思った一番の理由は何ですか?

農業経営では、年に一度の決算でしか経営の良し悪しを把握できないケースが少なくありません。当社も似たような課題があり、会計事務所出身の自分には、この状態がどうしても気持ち悪かった。
会計データ自体はあったわけですよね?
はい。まず手をつけたのが部門別会計の導入です。会計データをExcelに転記して、部門ごとの損益を算出するところまではできました。でも、「この品種の生産原価はいくらか」という最も知りたい数字には、たどり着けないままでした。

部門単位の直接原価までは分かっても、生産原価となると途端に見えなくなる。
まさにそうです。それでも、米価の変動幅が小さく農家の裁量も限られていた時代は、大まかな損益が分かれば何とかなっていました。ところが、昨今の肥料・農薬の価格高騰で生産費が大きく変化するなかで、「感覚」ではなく「正確な原価」に基づいた経営判断が求められるようになりました。

💡

読者の共感ポイント

「なんとなく儲かってる気がする」の正体は、品種単位の原価が見えていないこと。多くの農家が同じ状態にあるはずです。

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💻 挑戦①:Pythonの独学 → 挫折

最初はプログラミングに挑戦されたそうですね。
会計データのCSVからプログラムで部門別損益を算出できないかと、Pythonに取り組みました。
どうでしたか?
コードの書き方を覚えるだけで時間が消えていき、本当にやりたいこと ― つまり原価の算出 ― にたどり着けない。手段の習得に時間を取られ、目的を見失いかけました

⚠️

教訓

やりたいことが明確なのに、そこへの道具(プログラミング)の習得コストが高すぎると、目的と手段が入れ替わってしまう。

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🤖 挑戦②:生成AI(初期)→ 足踏み

そこで生成AIと出会ったわけですね。
「これなら自分でコードを書かなくても、やりたいことを伝えれば実現できるかもしれない」と期待しました。
期待通りにはいかなかった?
当時のAIはまだ長文の意図を把握する能力が低くて、自分で設計を考えた上で「この部分はどうコーディングすればいいか」と一つずつ聞いていくしかありませんでした。

原価計算で一番ネックだったのは?
各費用を品種ごとに配賦する作業です。減価償却費や人件費を品種ごとにどう按分するか。このロジックについてAIに聞いても、不明確な回答しか返ってこない。足踏みの状態がしばらく続きました

プロンプトの進化(初期)

当時AIが出してきた設計仕様書。3層レイヤーで整理された理想的なアーキテクチャだが、現場の揺らぎや運用負荷はまだ反映されていない

プロンプトの進化(初期)

初期のシート設計テンプレート。M_品種マスタ、M_作業マスタなどを提案。一般的なDB分割として妥当だが、後に再設計が必要に

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⚡ 挑戦③:AIの進化 → 逆に混乱

やがてAIが進化して、長文のコードも書けるようになりましたよね。
はい。より複雑な意図を理解して、長文のコードや込み入ったシート設計を提案してくるようになりました。「これでいけるかもしれない」と感じましたが、現実は逆でした。
逆とは?
提案の中身を十分に理解できていない状態で複雑な設計を受け取っても、ひとたび不具合が起きると、どの部分が原因なのか分からない。修正しようにも手がかりがなく、すぐに頓挫してしまう。

ハルシネーションの具体エピソード

AIが「そのままでいい」と判断したシート構造が、実は循環参照を引き起こしていた。設計レベルのハルシネーションが起きた場面

ハルシネーションの具体エピソード

問題発生後、自動連携をやめて手入力に退避。「完全自動が正義ではなく、壊れない設計が優先」という教訓が生まれた

AIが賢くなったのに、かえって困った。
AIが賢くなったことで、かえって人間がついていけなくなるという皮肉な状況に陥りました。

🔑 この3回の挑戦で見えたこと
挑戦①
Python独学
手段の習得コストが高すぎる
挑戦②
生成AI(初期)
AIの理解力が追いつかない
挑戦③
AI(進化後)
今度は人間側が追いつかない
共通するのは「自分が理解できない領域で戦おうとしていた」ということ。
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✨ 転換点:「自分の土俵で戦う」という決断

ここで方針を大きく変えたんですね。
AIに過去の経緯と最終的にやりたいことを丁寧に伝えた上で、やりとりの中で「自分が慣れたツールを使うのが目的達成の近道だ」という結論に至りました。プログラミングではなく、日常的に使い慣れたスプレッドシートで再度トライすることにしたのです。
AIの側も進化していた?
この段階でAIもかなり進化していました。当初は会計特有の「借方・貸方」の概念をAIがうまく扱えず、CSVを読み込ませても正確な金額を出せなかったのが、この時点では貸借の関係も問題なく理解し、的確な提案をしてくれるようになっていました。「今度こそいけるかもしれない」。本気でそう感じた瞬間でした。

ポイント

AIの能力が上がるのを待つだけでなく、自分の得意な土俵(スプレッドシート)にフィールドを移したことで、人間側の理解力とAIの提案力が噛み合い始めた。

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🔗 本格スタート:4つのデータの統合

スプレッドシートで再スタートして、まず何に取り組みましたか?
正確な生産原価を算出するには、4種類のデータの統合が必要です。

💰
部門別の会計データ
お金の動き
📋
作業日報
人の動き
🚜
機械の減価償却
設備のコスト
🌾
収穫量データ
成果の記録
いきなり全部を統合するのは大変そうですが。
ここで徹底したのが、AIとの「認識合わせ」です。データをAIと共有し、お互いの理解を完全に一致させてから設計に入る。そうしないと、AIがデータの中身を想像で補い、全く違う前提からスタートしてしまう。
そこは痛い目を見た経験から?
はい。そもそもの認識が食い違っていた、という失敗はそれまで何度も経験していました。少しでもズレを感じた時は、迷わず疑問を投げかける。あるいは直接スクリーンショットを送り、「これで合っているか」と慎重にすり合わせながら進めました。理解が不十分なまま進めると後からの修正はほぼ不可能だという危機感があったからです。

🔍
AIの理解を確認
データを渡したら、まずAIがどう理解したか確認する
即質問する
少しでも違和感があれば迷わず疑問を投げかける
📸
視覚的にすり合わせ
スクショを使って「これで合っているか」を確認
認識一致→実装
認識が一致してから設計・実装に入る

プロンプトの進化(現在)

現在のプロンプト。同じ「作付作業」でも、トラクタ播種・田植機による移植・手播種は別物。部門名×作業名のセット管理を指示するレベルまでAIとの対話が進化した

この4つのデータ統合から先、具体的にどんな壁にぶつかったのかは次回詳しく伺います。
ファイルが壊れたり、会計ソフトの数字がどうしても合わなかったり…。5つの大きな壁がありました。でも、全部乗り越えて「経営コックピット」は完成しました。その話は次回で。

Before

Before→Afterの対比

従来の品種別損益一覧。正確だが情報量が膨大で、「どこを見て何を判断するか」が直感的でない

After

コックピット完成画面

品種ごとの総コスト・収穫量・1俵原価を一覧で比較。”見るための表”から”使えるデータ”へ

📊

📝 まとめ

フェーズ やったこと 学び
Before 年1回の決算に依存。部門別会計をExcelで試行 品種別原価にはたどり着けない
挑戦① Python CSVから自作プログラムで損益算出を目指す 手段の習得コストが高すぎると目的を見失う
挑戦② AI(初期) 配賦ロジックをAIに質問 当時のAIでは長文理解・専門判断に限界
挑戦③ AI(進化後) AIが複雑なシート設計を提案 人間が理解できない設計は不具合時に手が出ない
転換点 スプレッドシートに切り替え 自分の土俵 × AIの提案力 = 突破口
本格構築 4データ統合 + 認識合わせの徹底 AIとの前提共有なしに設計は進まない
📊

⏱ 5分で試せるアクション

今日のチャレンジ:手元の経営データをAIに読ませてみよう

kamokobuさんの第一歩は「会計データをAIに渡して、品種別に整理できるか試す」こと。まずは小さく始めてみましょう。

プロンプト①:データの整理

📋 AIへの指示文(コピーして使えます)
私は【作物:例 露地野菜(多品種)】農家です。
以下の売上・経費データを品種別に整理し、
品種ごとの利益率を出してください。【データ】
(ここにCSVや表を貼る)出力形式:
– 品種名|売上|直課費|利益率
– 利益率が低い品種にはコメントを添えてください

プロンプト②:認識合わせ(kamokobu流)

📋 AIへの指示文(コピーして使えます)
以下のデータを渡します。
まず、あなたがこのデータをどう理解したか説明してください。
– 各列が何を表しているか
– 全体の構造
– 不明な点や確認したいこと私の理解と一致しているか確認してから、次のステップに進みます。【データ】
(ここにCSVや表を貼る)
📊

📺
次回予告

Vol.2:データが語り始めた日 ― “経営コックピット”で品種別の儲けを丸裸にする【後編】

約1年の試行錯誤を経て完成した経営コックピット。次回は、そのデータが実際に語り始めた瞬間を描きます。品種ごとの収益性を丸裸にしたら「思っていたのと違う」品種が見えてきた。定年退職者増による人手不足に、データでどう向き合うか。AIを”第三者の参謀”にすることで、親世代との対話はどう変わったか ―― データ→分析→意思決定のサイクルが初めて一回転した、その全貌をお届けします。

📊

📂 『kamokobuさんの経営コックピット』記事一覧
  • Vol.1
    挫折と転換 ― 農家がAIと”経営コックピット”を作るまで【前編】
    今回
  • Vol.2
    データが語り始めた日 ― “経営コックピット”で品種別の儲けを丸裸にする【後編】
    近日公開
  • Vol.3
    対話型の経営参謀 ― コックピットをAIに「相談できる仕組み」へ格上げする
    近日公開
📊

💬読者の声をお聞かせください

この記事へのご感想や、「こんなAI活用を知りたい」というリクエストをお待ちしています。




※ この記事はAIツール(ChatGPT・Claude等)を活用して作成し、編集部が内容を確認・編集しています。正確性には十分配慮していますが、最新情報は公式サイト等でご確認ください。

この記事は農家の皆さんのAI活用を応援するために作成しました。
ご質問やご感想があれば、ぜひお寄せください。

© 2026 農業AI通信 / Metagri研究所

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