【第2弾】月額0円のスマート農業 ― ビニールハウス温度モニタリングをDIYで実現

連載
🌾 とみやすさんのAI実践録

Vol.2

農家の声
中級

月額0円のスマート農業 ― ビニールハウス温度モニタリングをDIYで実現

〜 SwitchBot × Cloudflare × LINE。マイナス15度の朝を変えた、非エンジニア農家のIoT開発記 〜

Vol.1では、冨安さんがAIと出会い、100日チャレンジを通じて「何ができるか」を体に染み込ませていった過程をお伝えしました。

第2回は、そのスキルが農業現場のリアルな課題を解決した実践編です。テーマは、ビニールハウスの温度モニタリングシステムのDIY構築と、さらにその先の挑戦である自動巻き上げ機の開発

「高額な農業アプリを契約しなくても、自分で作れる」。冨安さんが証明した、月額0円のスマート農業の全貌をお伝えします。

Vol.2
今回のテーマ

🌡️ 「月額0円のスマート農業」― ビニールハウス温度モニタリングをDIYで実現

「マイナス15度の朝、往復30分かけてハウスに行って温度を確認して5秒で帰る」。その日常を変えたのは、市販の温度センサーと無料のクラウドサービス、そしてLINEでした。

WFPダチョウファームのトラクター作業

📸 春の始動 ― 北海道の農業現場で「人×機械」が交わるリアル

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🧑‍🌾 農家プロフィール

冨安寛樹さん

冨安寛樹 (とみやす ひろき)
WFPダチョウファーム|北海道|農業法人役員
項目 内容
農場名 WFPダチョウファーム
所在地 北海道沙流郡平取町・勇払郡むかわ町
経営規模 約100ha・年商約1億円
栽培品目 ブロッコリー、大豆、カボチャ、ネギ ほか
役職 農業法人役員
SNS X(@tomiyasu16)、noteTikTok
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❄️ Before:往復30分、確認5秒

マイナス15度の朝。車で往復30分、温度を確認して5秒で帰る ― それが「当たり前」だった毎日。

冨安さんの農場がある北海道・平取町の冬は、マイナス15度まで冷え込みます。

ビニールハウスで長ネギの苗を育てている時期、温度管理は欠かせない作業です。しかし、以前の温度確認はこんな流れでした。

💬

「朝5時。エンジンをかけて車が暖まるまで5分。ハウスまで10分。温度計を覗く。『3.2℃か…大丈夫だな』。そのまま帰る。往復30分、確認5秒。」

― 冨安さんの「以前の朝」

中に入らなければ温度はわからない。過去の推移も記録に残らない。「昨日の夜、何度まで下がったんだろう?」は永遠に謎のまま。去年は急な温度上昇に気づけず、苗を枯らしてしまった経験もあったといいます。

農業にたとえるなら、毎日わざわざ畑まで歩いて土の温度を手で確かめに行くようなもの。「もっと楽にできないか」という課題は、冨安さんの中でずっと燻っていました。

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☀️ After:布団の中からデータで判断

LINEで「温度」と送るだけ。布団の中から仮説を立ててからハウスに向かう朝へ。

❄️
Before
  • マイナス15度の朝、車で往復30分
  • 温度計を覗いて5秒で帰宅
  • 過去の推移は記録に残らない
  • 「昨夜、何度まで下がった?」は永遠に謎
☀️
After
  • 布団の中からLINEで「温度」と送信
  • 2秒後に最新の温湿度が返る
  • 1日の温湿度推移グラフも見られる
  • データで仮説を立ててからハウスへ

「行かなくていい」だけでも十分なメリットですが、冨安さんが強調したのはそこではありませんでした。

💬

「行く前に”考えられる”ようになったのが大きいんです。データがあると、行動の前に仮説が立つ」

― 冨安さん

温度の推移を見て、「この冷え込み方なら隙間風だな」と仮説を持ってからハウスに向かう。勘と根性の温度管理から、データに基づく判断へ。たった1つのセンサーとLINEが、農家の朝を変えました。

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⚙️ システム全体像:月額0円の仕組み

SwitchBot → Cloudflare → LINE。驚くほどシンプルなデータフローで、ランニングコストは月額0円。

SwitchBot温度モニタリングシステムの図解

📸 SwitchBot × Cloudflare × LINEの温度モニタリングシステム全体像

項目 内容 コスト
SwitchBot 温湿度計プロ + 防水温湿度計 ハウス内の温湿度を計測 約2,000円
SwitchBot Hub Mini Bluetooth → Wi-Fi中継 約5,000円
Cloudflare Workers / D1 データ取得・蓄積サーバー 無料枠
LINE Messaging API LINE Bot(通知・返信) 無料
ランニングコスト 月額0円

💡

コスト比較

商用の農業IoTサービスなら月額数千〜数万円が一般的。冨安さんのシステムは初期投資約7,000円、月額0円。しかも自分で作っているから、いつでも機能を追加・変更できるのが最大の強みです。

📎

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🔋 なぜSwitchBot? ―「乾電池」と「API」が決め手

ESP32自作か、SwitchBot市販品か。2つの選択肢から冨安さんが選んだ理由。

1
API ― データを外に出せる
SwitchBotはAPIを公開。温度データをLINEにもGPTにも自由に飛ばせる。「アプリの中でしかデータが見られないなら、チームに浸透させるのは難しい」
2
乾電池 ― 配線ゼロ
ESP32自作だと「電源どうする?」問題が発生。SwitchBotは乾電池式で配線不要。Hub MiniのBluetooth圏内ならハウスのどこにでも設置可能

💬

「令和の時代に乾電池!?と思うかもしれませんが、配線を考えなくていいのは農業現場では圧倒的に楽なんです」

― 冨安さん

ビニールハウスの長さ約50m、Bluetooth接続で問題なし。ハウス中央にSwitchBot温湿度計プロ、ハウス端に防水温湿度計という構成で運用しています。

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💬 なぜLINE? ― チーム浸透の設計思想

外国人スタッフ・パートの方も多い100haの農場。新しいアプリのハードルをゼロにした「LINE設計」とは。

冨安さんの農場は100haの大規模経営。従業員には外国人スタッフやパートの方も多くいます。

新しいアプリをインストールしてもらうハードルは高い。使い方を教える手間もかかる。では、みんなが毎日使っているアプリは何か?

LINEです。

📲
ダウンロード不要
新しいアプリのインストール・ログイン一切なし
🌏
言語の壁を超える
外国人スタッフもパートも日常的に使っているLINE
👆
ワンタップで確認
リッチメニューを押すだけで温度が出る。教育コストゼロ

💬

「既存の農業アプリだと、いつものLINEとは別のアプリに飛ぶ運用になって面倒なんです。外国人スタッフやパートの方も多いので、農業専用アプリだと難しい。LINEなら、みんなが日常的に使っているから浸透しやすい」

― 冨安さん

実際に運用を始めてからは、メンバーが自宅から「ハウス温度」と送ってくれるようになったそうです。冨安さんはLINE Botの管理画面を見てニヤニヤしたとか。

内製だからこそLINE連携もできる。これは商用アプリにはない、自分で作ったシステムならではの自由度です。

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🛠️ 開発の裏側:2〜3週間の実装プロセス

構想から運用まで2〜3週間。コードを書くのは「あっという間」。時間がかかったのは調査と現場設置。

1
🔍 調査フェーズ
「ネットにつながる温度計って何がある?」「データをクラウドに送るには?」――デバイスの選定からAIに相談
2
📦 購入・設置
SwitchBot温湿度計とHub Miniを購入。ハウスに設置
3
💻 開発
ChatGPT CodexでCloudflare Workers上にLINE Botを構築。CodexのSkills機能でデプロイから動作確認まで一気通貫
4
🚀 運用開始
15分に1回、自動でデータ取得+蓄積。LINEから即確認可能に

「コードを書くこと自体は、本当にあっという間でした」 と冨安さん。時間がかかったのは、むしろ「どのデバイスを使うか」「どうやってデータをクラウドに送るか」という調査と現場設置の部分。プログラミングそのものではなく、「何を作るか」を考える部分に時間を使ったのです。

ここでもVol.1で紹介した複数AIの比較検証が活きています。デバイスの選定ではChatGPTとClaudeの両方に聞いて情報を突き合わせ、最終的にはAmazonのレビューも確認して判断。1つのAIだけに頼らない慎重さが、着実な成果につながっています。

WFPダチョウファームの収穫現場

📸 ブロッコリーの収穫作業 ― こうした忙しい現場で「シンプルに使える」ことが求められる

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🔩 次の挑戦:自動巻き上げ機DIY

温度が「見える」ようになった冨安さんの次のステップ ― ソフトウェアからハードウェアへ。

温度が「見える」ようになった冨安さんは、次のステップへ進みました。ビニールハウスの自動巻き上げ機の開発です。

現在、ビニールハウスの換気は手巻きのハンドル操作。日中、温度が上がりそうなら人がハウスに行って手動で開ける。それが10棟分。しかも温度の急上昇に気づけなければ、苗を枯らしてしまうリスクもあります。

「自分で作れないかな?」 ――そう思ってChatGPTに聞いてみると、部品リストと配線図がズラッと出てきたのです。

💬

「ワクワクが止まらなくなりました」

― 冨安さん(ChatGPTに巻き上げ機の設計を聞いた瞬間)

Phase 1
手動スイッチでモーターを動かす
✅ プログラム完成
Phase 2
温度センサーと連動して自動開閉
🔧 設計中
Phase 3
LINEから遠隔操作(「ハウス開けて」→モーターが動く)
💭 構想段階

構成はESP32開発ボード+BTS7960モータードライバー+24Vギアモーター+電源。2025年12月から開発を開始し、現在はモーター制御プログラムが完成。配線・防水設計・現場テストを進めている段階です。

AI×電子工作:知識ゼロからの配線設計

ここで冨安さんが直面したのは、ソフトウェアとはまったく異なる壁でした。

「24Vって何? リレーって何? モータードライバーって必要なの?」

電気工作の知識はゼロ。すべてAIに聞くところからスタートしました。配線図もAIに描かせ、必要な部品もAIに選んでもらう。

ただし、ここにはソフトウェア開発にはないリスクがあります。配線を間違えたら、ショートして電子機器が壊れる。下手をすれば火災の危険もあります。

🤖
Claudeに質問
×
🤖
ChatGPTに質問
×
📦
Amazonレビュー確認

確信を持って実行

💬

「Claudeがこう言っているけど、GPTは違うことを言っている。じゃあ両方の情報を掛け合わせて、どこが合っているかを確かめる。最終的にはAmazonのレビューも見て判断する」

― 冨安さん

電子部品の選定ではClaude(Opus 4.6)が一番精度が高いという感触。ただし使用制限が早い(5〜10回で制限、3時間待ち)のが悩みどころ。Claudeの回答をChatGPTに渡して図解してもらうなど、AI同士の強みを組み合わせる使い方も編み出しています。

「プログラム自体は”一瞬”で書けるんです。
時間がかかるのは、部品を選んだり、配線を組んだりする”人間側”の作業。
人間がボトルネックになっている感がある

― 冨安さん

1年前はAIで現場に使えるレベルのものが作れなかった。それが今年に入って、AIが自律的に自走してシステムを形にしてくれるレベルにまで進化した。コードを書く工程はAIが劇的に短縮し、開発のボトルネックは「人間が何を作るか考え、物理的に組み立てる部分」に移行したのです。

将来的には、LINEから「ハウス開けて」と送ればモーターが動く。さらに温度データと連携して、設定温度を超えたら自動で換気が始まる仕組みを目指しています。

🌾

📝 Vol.2 まとめ

今回のポイント

  • Before:マイナス15度の朝、往復30分かけて温度確認5秒で帰る日常
  • After:布団の中からLINEで温度確認。「行かなくていい」以上に「行く前に考えられる」のが大きい
  • 月額0円のシステム:SwitchBot温湿度計(乾電池式)+ Cloudflare(無料)+ LINE Bot
  • デバイス選びの決め手は「API(外部連携できる)」と「乾電池(配線ゼロ)」
  • チーム浸透の鍵は「いつものLINE」をハブにする設計思想。新しいアプリは不要
  • 調査から運用まで2〜3週間。コードを書くのは「あっという間」、時間がかかるのは調査と現場設置
  • 次の挑戦=自動巻き上げ機のDIY。プログラムは一瞬、ボトルネックは人間側に移行
  • 「いきなり全自動」ではなく、Phase 1→2→3の段階的アプローチ

圃場での集合写真

📸 広い畑を背景に ― 「みんなが使えるシステム」を目指す冨安さんとチーム

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📺
次回予告

Vol.3:「LINEから全部できる」― 100haの農場データをチームで共有する仕組み

温度データをLINEで見られるようにした冨安さん。次は農場全体のデータ管理をチームで回す仕組みへ。Airtable × LINE連携で「メンバーはAirtableを意識せずLINEから閲覧・入力」。さらにChatGPT Actionsで「畑にいながら音声でデータベース操作」という新しい農家の働き方が見えてきます。

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📂 『とみやすさんのAI実践録』記事一覧
  • Vol.1
    非エンジニア農家がコードを書く時代 ― 100日チャレンジ完走へ
    公開中
  • Vol.2
    月額0円のスマート農業 ― ビニールハウス温度モニタリングをDIYで実現
    今回
  • Vol.3
    LINEから全部できる ― 100haの農場データをチームで共有する仕組み
    近日公開
  • Vol.4
    外注時代から内製化時代へ ― AIが変える農業の未来
    近日公開
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