非エンジニア農家がコードを書く時代 ― 100日チャレンジ完走へ
〜 書籍との出会いをきっかけに、プログラミング経験ゼロの農家が毎日アプリを作り続けた100日間 〜
北海道平取町・むかわ町で約100haの農地を管理するWFPダチョウファームの冨安寛樹さん。ブロッコリー、大豆、カボチャ、ネギなど複数品目を手がける大規模法人の役員でありながら、プログラミング経験ゼロの状態からAIを使ったアプリ開発に挑戦しています。
今回から全4回にわたり、冨安さんがどのようにAIを農業現場に取り入れ、「自分で作る」スマート農業を実践しているのかをお伝えします。第1回は、AI活用を始めたきっかけと、100日チャレンジで得たものについてお聞きしました。
今回のテーマ
🚀 「非エンジニア農家がコードを書く時代」― 書籍との出会いから100日チャレンジ完走へ
「エンジニアじゃなくても、AIがあれば自分の現場に合った仕組みを自分で作れる」。その原体験となった100日間の挑戦を振り返ります。

📸 北海道・WFPダチョウファームのブロッコリー圃場。100haのスケール感が広がる
🧑🌾 農家プロフィール

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 農場名 | WFPダチョウファーム |
| 所在地 | 北海道沙流郡平取町・勇払郡むかわ町 |
| 経営規模 | 約100ha・年商約1億円 |
| 栽培品目 | ブロッコリー、大豆、カボチャ、ネギ ほか |
| 役職 | 農業法人役員 |
| SNS | X(@tomiyasu16)、note、TikTok |
💡 AIとの出会い ― 「会話」から「コードが書ける」へ
ChatGPTとの出会いから、コードを書ける時代への転換。冨安さんが体験したAIの進化のスピードとは。
冨安さんがChatGPTに初めて触れたのは約3年前。当初の使い方は、栽培の疑問を聞いたり、文章の下書きを手伝ってもらう「便利な会話相手」程度でした。
しかしAIの進化は想像以上に速かった。Claude CodeやOpenAI Codexといったコード生成AIが次々と登場し、「質問する道具」が「自分で仕組みを作る道具」に変わったのです。
以前は「この部分を直して」「次はここを変えて」と一つひとつAIに頼んでいた開発が、いまやAIがアプリ全体のコードを一気に書いてくれる時代に。特に、OpenAI Codexのデスクトップアプリでは、複数の開発を並列で同時進行できることにも衝撃を受けたといいます。
冨安さんにとってAIとの出会いは、「答えをもらう」から「何ができるかを知り、自分で指示を出す」への転換でした。さらに100日チャレンジ14日目のnoteでは、APIを通じて大企業の技術を個人でも活用できることに気づき、「技術の民主化が進み、個人でも最先端のツールを使ってアプリを開発できる時代になってる」と綴っています。
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「技術の民主化が進み、個人でも最先端のツールを使ってアプリを開発できる時代になってる」
📚 1冊の本が火をつけた ― 大塚あみさんの「#100日チャレンジ」
プログラミング未経験から100日間毎日アプリを作り公開するチャレンジ。その書籍が、冨安さんの挑戦の引き金になりました。
大塚あみさんは、プログラミング未経験から100日間毎日アプリを作り公開するチャレンジを完走し、その経験を書籍化。「コードを書く時代は終わり、選ぶ時代」と語り、AI時代の新しい学習モデル=Vibe Codingとして注目を集めています。
冨安さんはこの本を読んでからアプリ作りの100日チャレンジを開始。書籍との出会いが、農家がコードを書くという新しい挑戦の引き金になりました。

📸 100日チャレンジのきっかけ ― 大塚あみさんの書籍との出会い
📎
- 書籍:大塚あみ『#100日チャレンジ 毎日連続100本アプリを作ったら人生が変わった』(日経BP)
🔥 100日チャレンジの実態 ― 仕事終わりに小刻みに開発
2025年の冬にPython独学からスタート。未経験のフレームワークもAIに聞きながら形にしていった100日間。
2025年の冬にPython独学からスタートし、100日チャレンジのDay9にはもう「毎日のアプリづくり」を投稿。未経験の言語やフレームワークでも、AIに聞きながら形にしていきました。

📸 100日チャレンジ Day9 ― Python独学中に始めた毎日のアプリづくり
最初は農業に関係なく、「プログラミングで何ができるか」を手探りで確かめる日々でした。冨安さんは「よくわかってなかったので、思いつくものを作ってアウトプットしてみようみたいな感じ」と振り返ります。触ったことのないReactやSupabaseでもAIに聞きながら形にし、「こんなことできるんだ」という感覚が少しずつ積み上がっていきました。
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「教科書学ばなくても、AIに聞きながらアプリ作れます。ただし”何ができるのか”を知らないとAIに指示を出すことができない」
そして、100日チャレンジのゴールは農場管理AIエージェントアプリの開発。約100haの農地を管理する農業法人で働く冨安さんは、「いつどこで誰が何をするか考え続けないといけなくて消耗する」という課題を抱えており、AIが農場情報を把握して作業予定を提案してくれるアプリを作ることで、自分自身が楽になることを目指しました。
前半50本で幅広いジャンルのアプリを試した経験が結合し、100日チャレンジは自分の農場のための開発へと進化していったのです。

📸 100日チャレンジのゴール ― 農場管理AIエージェントアプリの開発
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- note:「100日チャレンジの意味とは?AI時代のプログラミング学習」(2025/2/27・41日目)
- note:「農場管理AIエージェントアプリを作る。100日チャレンジのゴール」(2025/3/26・68日目)
💪 継続のコツ ― 「逃げ道ゼロ」の仕組み化
SNSで宣言し、退路を断つ。質より継続、形にするプロセスを楽しむ ― 冨安さん流の続け方。
継続の秘訣を聞くと、冨安さんは「アウトプットを無理やりしようと思ってやってました」と切り出しました。XとTikTokで毎日の成果物を公開し続けることで、「発信したからにはやるしかない。質は低くてもとりあえずやろう」という状況を自ら作り出したのです。
その上で、「最初から思い描いたものが一発でうまく動くなんてことはないので、根気もいる」とも。根底には、昔から好きだったシミュレーションゲームのように「思い描いたものを形にしていくプロセスが好き」というクリエイター気質がありました。
100日チャレンジで身につけたスキルは、この後のVol.2以降で紹介するスマート農業のDIY開発へと直結していきます。
🤖 使っているAIツール
3つの有料AIを使い分け、複数の回答を比較検証。農閑期にフル課金で使い倒す、農家ならではの活用術。
冨安さんはChatGPT Pro・Claude Pro・Gemini Advancedの3つの有料プランを活用し、用途に応じて使い分けています。開発のメインはChatGPT Codexのデスクトップアプリ。文章作成や調べ物にはClaudeが「精度が高い」と評価しつつ、「すぐ制限が来る」のが悩みどころだそう。
さらに、ビニールハウスの配線のようにリスクが高い作業では必ず複数のAIに質問し、回答を比較検証してから実行するのがルール。「一つのAIだと正解かわからない。複数に聞いて確信を深めていく」と語ります。
農閑期の冬にフル課金で使い倒し、春以降は農作業優先で利用を減らすという、農家ならではのメリハリも印象的でした。
💡
冨安さんの鉄則は「1つのAIを信じすぎない」。リスクのある作業では必ず複数のAIに聞き、回答を突き合わせてから実行。農閑期にフル課金で使い倒し、繁忙期は控えるという農家ならではのメリハリも。

📸 北海道の圃場にて ― 100haの農地を管理するチーム
📝 Vol.1 まとめ
今回のポイント
- AI活用のきっかけは3年前のChatGPT。最初は「会話相手」として利用
- Claude Codeの登場で「AIでコードが書ける」を体感し、開発に目覚める
- 大塚あみさんの書籍『#100日チャレンジ』を読んで、自身も100日チャレンジを開始
- 毎日1本アプリを作ってSNSで公開。未経験のReact・Supabaseも AIに聞きながら形に
- 継続のコツは「SNS宣言で逃げ道ゼロ」「質より継続」「形にするプロセスを楽しむ」
- ChatGPT Pro・Claude Pro・Gemini Advancedを複数課金で比較検証して活用
- Vol.1
非エンジニア農家がコードを書く時代 ― 100日チャレンジ完走へ
今回 - Vol.2
月額0円のスマート農業 ― ビニールハウス温度モニタリングをDIYで実現
近日公開 - Vol.3
LINEから全部できる ― 100haの農場データをチームで共有する仕組み
近日公開 - Vol.4
外注時代から内製化時代へ ― AIが変える農業の未来
近日公開
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