まずはデータ集めから!作業時間を測り始めた農家
── 北海道余市、成果ゼロから始める養鶏農家のAI
第1回では見えていなかった作業時間を、第2回では「渡せるもの/渡せないもの」の線引きを伺いました。ここまで、三太さんのAI活用の成果はゼロのままです。
最終回は、その先です。一番任せたい業務は経理。そして、AIに読ませるために三太さんが自分で始めたことがあります。皿洗いの時間まで、分単位で測ること。そこから、まったく予想していなかった変化が起きました。
「任せる」の前に「読ませる」── 分析より先に、記録から始める
経理の自動化、小屋の移築ワークショップ、そして計測。AIに何かを任せる手前で、農家に何ができるのかを伺いました。
🎯 この記事でわかること
- 一番任せたいのは経理。レシートを撮るだけで表計算になる、というCMが入口になった話
- 「小屋の移築ワークショップ」の企画・集客・運営は、どこまでAIに投げられるのか
- AIに読ませるために始めたスマートウォッチと紙での時間計測と、そこで起きた予想外の変化
- 小規模農家にテクノロジーが根付く鍵は、理論ではなく身近な成功事例だという実感
🧾 1. 一番任せたいのは経理 ── 入口はCMの映像だった
注目したいのは、入口が製品比較でも導入事例でもなく、テレビCMの映像だったという点です。「レシートを撮ると表計算になる」という一場面が、そのまま自分の作業に重なりました。第2回で見た「数値の比較が得意」という一言と、構造は同じです。動きが見えると、人は自分の作業に当てはめられます。
🛖 2. 「小屋の移築ワークショップ」は、どこまで投げられるか
もうひとつ、取材中に出てきた構想があります。取材の直前、農園を歩きながら考えていたという話でした。
「今ひとつ小屋を移築したいと思っているんですよ。それをワークショップ型でやりたくて。『ワークショップ型で小屋を移築したいんですけど』とAIに伝えたら、企画、運営、人集めまで含めて、どこまでAIにぶん投げられるんだろう、と思っています」
経理が定型業務の自動化だとすれば、こちらは非定型です。企画も集客も運営も、正解が1つに決まりません。AIに任せられる範囲を測るには、こちらのほうが良い題材だと言えます。三太さんはまだ試していませんが、問いの立て方としてはすでに具体です。
AIに何かを頼むとき、多くの人は「できますか?」と聞きます。三太さんの問いは「どこまで投げられるか」でした。できる/できないの二択ではなく、境目を探す聞き方です。返ってきた答えのうち、使えなかった部分こそが自分の担当範囲だと分かります。
⌚ 3. 皿洗いの時間を測り始めた ── AIに読ませるための、その前の準備
高度なサポートをAIに求めるなら、農園のデータを読ませる必要があります。三太さんも、そこは同じ認識でした。
「AIを活用するためには自分の情報を読み込ませていかないといけない。以前送ってもらったAIの日誌みたいに、日誌を読み込ませるのって『AIを育てる』『AIとの関係をつくる』いい手法だなと思ったんです。だから今、自分の作業時間を把握することを意識し始めました」
方法を伺うと、道具立てはごくシンプルなものでした。
「スマートウォッチで時間を分単位で測って、紙に書き留めて記録を残しています。『この作業には何分かかっている』というのをデータとして残して、将来的にAIに読み込ませるために始めました。皿洗いに何分かかるか、とかね(笑)」
取材時点で、このデータはまだAIに読ませていません。紙のまま、手元に溜まっている段階です。それでも、第1回で触れた「整理整頓に思ったより時間を取られている」という発見は、この計測から出てきました。分析の前に、記録だけで見えるものがあります。

💪 4. 副産物 ── 鳥の世話が、トレーニングになった
計測を始めてから、三太さんは想定していなかった変化に気づきます。
毎日の鳥の世話って、どうしてもダラダラしがちだったんです。でも、スマートウォッチで時間と「心拍数」を測るようにしたら、なんと作業自体がトレーニングになってきて(笑)。姿勢、重心、腹圧を意識しながら「いかにスピード感を高めてできるか」を考えるようになって。
時間を測ることで、ダラダラしがちだった農作業のスピード感や身体の使い方が一変した、と三太さんはおっしゃいます。AIに自分を知ってもらうために始めた計測が、AIに渡す前に本人の作業の質を変えていました。
計測の影響は、農作業だけにとどまっていないそうです。スマートウォッチは生活習慣そのものにかなり影響していて、睡眠や運動の計測から食事管理にまで及んでいるとのこと。最近は自分で調合したプロテインを飲んでいるといいます。ご本人は「農業経営とは関係ありませんが」と前置きされていましたが、測り始めた人の行動は、測った領域の外側まで変わっていく。経理でも作業記録でも、同じことが起きうるように思います。
ここが、この連載でいちばん面白い部分だと思っています。AI活用の成果はまだゼロです。にもかかわらず、AIを使う準備をしただけで、先に効果が出ている。導入の前段にある「測る」という行為そのものに、それだけの力がありました。
🌍 5. 必要なのは理論ではなく身近な成功事例 ──「一緒に知りたい」という現在地
三太さん自身の入口も、まさにこれでした。CMで見たレシートの映像、身近な人の「比較が得意」という一言、送ってもらったAI日誌の実物。抽象的な可能性ではなく、動いている具体を見たときに手が動いています。
全3回を通して、三太さんのAI活用に「導入した」「効率化できた」という結論は出てきません。経理は未導入、移築ワークショップは未着手、計測データはまだ紙のままです。この連載が記録できたのは、成果ではなく助走の部分だけです。それでも、助走を始めた農家がどこから手をつけたのかは、これから始める方にとって、完成形より参考になるはずだと考えています。
最後に、同じように農業経営をされている全国の読者へ向けたメッセージを伺いました。返ってきたのは、呼びかけというより、率直な現在地の表明でした。
「すでにAIを使っている人がいたら、逆に教えてほしいと思っています。使っている人には教えてほしい。使っていない人とは、一緒に知っていきたい。まだ『AI、いいよ』と人に勧められるほど自分自身が使っているわけではないので、『一緒に知りたいね』というくらいなんじゃないかな。世の中がこれからどうなっていくんだろうね、って」
使いこなしている人の言葉ではありません。ですが、いま同じ場所に立っている農家にとっては、こちらのほうが近い言葉だと思います。
全3回、ご愛読ありがとうございました
第1回は、見えていなかった時間。第2回は、渡せるもの/渡せないものの線引き。第3回は、AIに読ませるための記録。AI活用の成果はまだゼロ。それでも、始める準備はもう始まっていました。この連載が記録したのは、その助走です。
三太さんは「サンタのトコロ」として、農園の日々をYouTubeで公開されています。この記事のその後は、ぜひ動画でご覧ください。
yamon(農業AI通信 取材陣)
まとめ
- 一番任せたいのは経理:レシートを撮るだけで表計算になるというCMの映像が、そのまま導入の入口になりました
- 非定型業務への問い:「小屋の移築ワークショップをどこまでAIに投げられるか」は、境目を探す良い聞き方です
- 計測はスマートウォッチと紙:皿洗いまで分単位で測り、将来AIに読ませるために記録を残しています
- 予想外の副産物:心拍数を測ることで姿勢・重心・腹圧を意識するようになり、鳥の世話がトレーニングになりました
- 普及の鍵は身近な成功事例:理論ではなく、動いている具体を見たときに人の手は動きます
⏱ 今日からできる5分アクション
三太さんも、最初は皿洗いの時間を測るところから始めました。あなたも、AIに渡す前の「記録」から始めてみませんか?
- 今日いちばん時間がかかったと感じた作業を1つ書き出す
(例:出荷準備、書類探し、片付け) - その作業だけ、明日から3日間、開始と終了の時刻をメモする
(例:紙のメモで十分です。スマートウォッチがあればなお簡単) - 3日ぶんのメモをAIに渡し、「この記録から気づくことを3つ」と聞いてみると決める
📂 AI成果ゼロからの出発点シリーズ(全3回・完結)
- Vol.1寝室にPCを置いたら、YouTubeが止まった✅ 公開済み
- Vol.2効率化はしたい。でも、言葉は任せたくない✅ 公開済み
- Vol.3「皿洗いの時間」を測り始めた農家📍 今回
💬読者の声をお聞かせください
全3回を読んでのご感想や、「うちではこう使っている」というご報告をお待ちしています。三太さんへお届けします。
※ この記事はAIツール(ChatGPT・Claude等)を活用して作成し、編集部が内容を確認・編集しています。お名前・農園名は、ご本人の許諾を得て実名で掲載しています。ご家族のお名前は伏せています。

