AIで効率化はしたい。でも、自分が発する”言葉”は任せたくない!
── 北海道余市、成果ゼロから始める養鶏農家のAI
第1回では、北海道余市町「サンタのトコロ」の伊藤三太さんに、9000坪の開墾と、自分で測って初めて見えてきた作業時間について伺いました。AI活用の成果は、ご本人いわく現時点でゼロです。
ところが日常を伺っていくと、AIはすでに三太さんの生活に入り込んでいました。第2回のテーマは、その使い方と、「これだけは任せたくない」と決めているものです。効率化を望みながら、はっきりと線を引いている場所があります。
「使っていない」から「もう使っていた」へ ── 渡せるもの/渡せないもの
買い物の比較、要約、聖書の調べもの。日常のAIを棚卸ししたうえで、任せる/任せないの境目がどこにあるのかを伺いました。
🎯 この記事でわかること
- 「自発的には使っていない」人が、実は毎日使っていたスマホのGeminiの使い方
- 身近な人の一言から始まった、「数値の比較が得意」という具体的な入口
- 動画編集は「早ければ半年で」任せられると見ながら、それでも急がない理由
- 農家として譲れない一線と、整理して見えてきた渡せるもの/渡せないものの線引き
📱 1. 「使っていない」ではなく、「使っていると気づいていない」
第1回で「AIは自発的・意識的には使っていない」とおっしゃっていた三太さん。改めて日常の中でのAIについて伺うと、返答は意外なものでした。
きっかけは、身近な人からの一言だったそうです。息子さんから「買い物するとき、AIに相談したらいいよ。数値の比較が得意だから」とアドバイスを受けたことが入口になりました。
そこから、要約を頼む、難しい法律用語を「分かりやすくして」と頼む、といった使い方が日常に加わっています。「AIを使おう」と決めて始めたのではなく、用途のほうが先に来ています。
使い方の内訳を見ると、農業の現場との相性の良さも見えてきます。画像で調べるのは、手が汚れていても、名前が分からないものでも使えるということです。音声で入力するのは、キーボードの前に座らなくていいということです。第1回で「パソコンを寝室に置いたら編集が止まった」という話がありましたが、スマホのAIは、その動線の問題を最初から持っていません。持ち歩いているものの中に、すでに入っているからです。
それでも三太さんは、これを「AIを使っている」とは数えていませんでした。ここが、これから始める農家の現在地を考えるうえで大事な点だと思います。導入していないのではなく、導入したという実感がないだけという段階があります。
三太さんが最初に受け取ったのは「AIを使ったほうがいい」ではなく「数値の比較が得意」という具体でした。人にAIを勧めるときも、道具の名前ではなく得意な作業を1つ渡すほうが届きます。
🙏 2. 聖書を、子どもにどう説明するか
もうひとつ、三太さんならではの使い方があります。教会学校で話をする機会があり、その準備にAIを使っているそうです。
「『これを子どもにどうやって説明したらいいですか?』とか、『聖書の中で最初に《霊》が出てきた場面はどこですか?』って聞いたりしています」
ここには2種類の用途が混ざっています。ひとつは探すこと(膨大なテキストから該当箇所を見つける)、もうひとつは翻訳すること(大人向けの内容を子ども向けの言葉にする)。どちらも、農作業とはまったく違う場面ですが、農家の仕事にもそのまま置き換えられます。過去の栽培記録から該当する年を探す。専門的な資料を、家族に説明できる言葉にする。用途の形は同じです。
🎬 3. 動画編集は「早ければ半年で」── それでも急がない理由
第1回で触れたとおり、三太さんのYouTube更新は遅れ気味です。撮影はできるけれど、編集の時間がつくれない。そこにAIが使えないかは、ご自身でも考えていました。
「今後AIが発達して編集に時間がかからなくなったら任せてみたいですね。カットとテロップと動画の雰囲気だけ指定して『あと、やっておいて』という感じで。たぶんあと1〜2年、早ければ半年くらいで普通にできる世界になるのかなと思っています」
ただし、すぐに任せたいわけではないそうです。
「撮ったものを寝かせることでドキュメンタリーとしての価値が高まるという要素もゼロではないと思っているので、焦らず任せられる時が来たら任せたいなと」
この2つは、一見すると矛盾しています。編集の時間がつくれなくて更新が止まっているのに、任せられるようになっても急がない。ですが三太さんの中では、編集にかかる「作業の時間」と、映像を寝かせる「熟成の時間」は別のものとして分かれています。AIが短縮できるのは前者だけです。
効率化できる作業のすべてが、効率化すべき作業とは限らない。ここが、次の話につながります。

✋ 4. 「発する言葉だけは、任せたくない」── 渡せるもの/渡せないもの
言葉ですね。言葉を考えてもらうということには少し抵抗があります。自分の言葉ではないものに、自分のメッセージを託したくない。声というより、言葉の選び方ですね。もちろんデータがたくさんあれば俺っぽい言葉の選び方をするのかもしれないけど、やっぱり自分のメッセージは自分の言葉で発信したい。
ここで終わると、ただの感情論に読めてしまいます。ですが三太さんは、任せてもいいものについても具体的に挙げていました。翻訳は「助かるかもしれないね」。写真整理も「いいかもしれないね」。
並べると、線がはっきり見えてきます。
| 任せてもいい | 任せたくない |
|---|---|
| 翻訳 | 自分が発する言葉(言葉の選び方) |
| 写真整理 | |
| 動画編集(技術が追いついたら) | |
| 買い物の比較・要約・法律用語の言い換え |
任せてもいいのは自分の代わりに手を動かすもの。任せたくないのは自分の代わりに考えるもの。この境目は、作目にも規模にも関係なく、そのまま自分の仕事に当てはめられます。
興味深いのは、三太さんが拒んでいるのが「AIの文章が下手だから」ではないことです。むしろ逆で、データが十分にあれば自分らしい言葉を選べるようになるだろうと認めたうえで、それでも渡したくないとおっしゃっています。理由は品質ではなく、誰の言葉としてそれが出ていくのかという点にあります。
小規模な農家ほど、発信は本人の顔とセットで受け取られます。産地でも品種でもなく「この人から買いたい」で選ばれている場合、言葉はそのまま商品の一部です。三太さんの線引きは、こだわりであると同時に、経営上の判断としても筋が通っています。
ここまで整理されていても、三太さんのAI活用の成果は現時点でゼロのままです。動画編集は技術待ち、写真整理も翻訳も日常業務には組み込まれていません。「何を任せるか決めること」と「実際に任せること」の間には、まだ距離があります。この連載は、その距離を縮めた記録ではなく、距離があることを認めたうえで一歩目を踏み出した記録です。
三太さんは「サンタのトコロ」として、農園の日々をYouTubeで公開されています。記事で触れた「寝かせた映像」も、この中にあります。
yamon(農業AI通信 取材陣)
まとめ
- 「使っていない」の実態:三太さんはスマホのGeminiを日常的に使っていました。使っていないのではなく、使っていると認識していない状態です
- 入口は用途の具体:「AIを使ったほうがいい」ではなく「数値の比較が得意」という一言が入口になりました
- 動画編集は半年〜2年で:任せられる時期は近いと見ながら、寝かせることの価値も同時に認めています
- 任せたくないのは言葉:声ではなく、言葉の選び方。自分のメッセージは自分の言葉で発信したい
- 線引きの原則:手を動かすもの(翻訳・写真整理)は渡せる。考えるもの(言葉の選択)は渡さない
⏱ 今日からできる5分アクション
三太さんも、線引きを決めてからAIと付き合っています。あなたも、渡せるもの/渡せないものを紙に1本の線で引いてみませんか?
- この1週間でやった事務作業を3つ思い出す
(例:請求書づくり、写真の整理、SNSの投稿文) - その3つを「手を動かす作業」と「考える作業」に分けてみる
(例:写真の整理=手を動かす/お客さまへの返信=考える) - 「手を動かす」側の1つだけ、次回スマホのAIに頼んでみると決める
📂 AI成果ゼロからの出発点シリーズ(全3回)
- Vol.1寝室にPCを置いたら、YouTubeが止まった✅ 公開済み
- Vol.2効率化はしたい。でも、言葉は任せたくない📍 今回
- Vol.3「皿洗いの時間」を測り始めた農家🔜 公開予定
💬読者の声をお聞かせください
「自分ならここまで任せる」という線引きがあれば、ぜひ教えてください。
※ この記事はAIツール(ChatGPT・Claude等)を活用して作成し、編集部が内容を確認・編集しています。お名前・農園名は、ご本人の許諾を得て実名で掲載しています。ご家族のお名前は伏せています。

