寝室にPCを置いたら、YouTube更新が止まった!?
~ 北海道余市、成果ゼロから始める養鶏農家のAI ~
この連載でお話を伺うのは、北海道余市町で養鶏とブルーベリー、野菜を育てる伊藤三太さんです。開口一番、三太さんはこうおっしゃいました。「AIに関しては、自発的・意識的には使っていない」。具体的な効果も、現時点では出ていないとのことです。
これまでこのカテゴリでご紹介してきたのは、AIを使いこなしている農家の方々でした。今回は逆です。成果がまだゼロの農家が、そこから何をどう始めようとしているのか。全3回で、その出発点を記録します。第1回は、AIの前に横たわっていた「時間」の話です。
「使いこなす」の前に ── 9000坪の日常から、見えていなかった時間を掘り出す
親の代で荒れ地に戻った土地の開墾から、自分で測って初めて分かった時間泥棒まで。AIの話が出てくるのは、記事の最後です。
🎯 この記事でわかること
- AI活用の成果は、まだゼロ。それでも取材した理由と、これから始める農家の出発点
- 親から引き継いだ9000坪の開墾と、『北の国から』に憧れて始まった家族経営のリアル
- 夏は配達と草刈り、冬は除雪と送迎。忙しさは減らずに「質」が変わる一年
- 自分で測って判明した時間泥棒の正体と、PCの置き場所ひとつで止まったYouTube更新
🧑🌾 農家プロフィール
| お名前 | 伊藤 三太さん(サンタのトコロ) |
|---|---|
| 場所 | 北海道余市町 |
| 栽培品目 | 養鶏(鶏200羽・平飼いの有精卵)、小果樹(主にブルーベリー/毎年8月につみ取り体験)、野菜(主にニンニク・アスパラガス) |
| 体制 | 主に家族経営 |
| 農地 | 約9000坪。20年ほど放置されていた土地を2014年から開墾し、廃材で鶏小屋を建てた |
| 発信 | 日々の暮らしをYouTubeで公開(月1回更新)/公式サイト「サンタのトコロ」 |

🌱 1. 荒れ地に戻った土地を、もう一度 ── 構想ではなく、開墾から始まった
サンタのトコロの始まりは、三太さんご自身ではなく、ご両親でした。事業としてではなく「暮らしを豊かにするため」に、陶芸の窯をつくる土地を探していたところ、見つかったのがたまたま農地だったといいます。農地は農家にならないと買えない。そのため、ご両親は退職後の60歳前後で農家になりました。
ただ、経営としては続かなかったそうです。手が入らなくなった土地は、少しずつ荒れ地へ戻っていきました。
── そこから、どうして農業を継ごうと思われたのですか。
「親は全然経営できなくて、荒れ地に戻っていった。僕としては、その荒れ地をもう一度開墾したいという思いがありました。土地の単位が大きいから、必要以上に広かったですし」
もうひとつ、原点として挙げられたのが子どものころに見ていたテレビでした。ムツゴロウさん、そして『北の国から』。もともと動物や自然が好きで、そういうものに囲まれて暮らしたいという願望がすごく強くあった、とのことです。
いま、その土地は約9000坪。20年ほど放置されていた土地の開墾を始めたのは2014年のことでした(公式サイトより)。廃材を組んで建てた鶏小屋が、開墾し直した土地の真ん中に並んでいます。構想が先にあったのではなく、目の前の荒れ地が先にありました。

🐔 2. 休めない養鶏と、質が変わる忙しさ ── 夏は配達、冬は除雪
家畜を飼うと、毎日決まったルーティンが生まれます。一人でやっているとなかなか休めない、と三太さんはおっしゃいます。
売上の柱は、柿崎商店ともう一つの取引先です。この2社の店頭は夏にお客さんが増え、冬は落ち着きます。つまり夏は配達の頻度が上がり、そこに草刈りと畑の管理が重なるということです。
では冬は休めるのか、というとそうでもないそうです。
「冬は冬で除雪があります。それに子どもを駅まで送ったり、暮らしそのものが大変になる。道路に出るまで距離もあるしアップダウンも激しいので、冬場は車を上の方に停めておいたり」
忙しさは減るのではなく、質が変わる。夏の忙しさは売上に直結する作業で、冬の忙しさは暮らしを維持するための作業です。年間を通して、手が空く季節がありません。

⏱ 3. 時間を奪っていたのは、鶏でも作物でもなかった
── いちばん時間や手間を取られているのは、どの作業ですか。
「一番多いのは養鶏ですね。餌やり、水やり、卵を取って洗浄してパッキングして配達する一連の作業です。ただ、意外だったのが『空間管理(整理整頓)』で。片付けておかないとすぐに物が詰まって作業も詰まる。自分で作業時間を測ってみたら『ここにも結構なボリュームがあるな』と分かってきました」
注目したいのは、これが感覚ではなく実際に測った結果として出てきたという点です。作業日報にも売上にも表れない時間が、片付けという形で日々の中に埋まっていました。
この「測る」という行為は、第3回で連載の主題になります。三太さんの場合、それはAIの手前にある準備運動でした。
時間を測るとき、多くの人は主作業から測り始めます。ですが、そこは測らなくても大体わかっています。測ることの価値が出るのは、記録に残っていない作業のほうです。片付け、移動、探しもの。まず1週間、この3つだけ測ってみてください。
💻 4. YouTubeが止まった理由は、やる気ではなく置き場所だった
三太さんは、農園の日々をYouTubeで発信されています。更新は月1回。これがルーティンだったそうですが、取材時点では1か月ほど遅れ始めていました。
理由を伺うと、モチベーションの話が出るかと思いきや、返ってきたのは物理的な話でした。
以前は作業空間にパソコンがあったから休憩中に編集できたんです。でも今は母屋の「寝室」にパソコンを置いちゃって。寝室って寝る前しか行かないじゃないですか。
戻るころにはもう眠たいので、そこからパソコンを開いて作業する気持ちになれなくて(笑)。物理的な動線一つで止まっちゃうんですよね。
作業空間にあったときは、休憩のついでに編集ができていました。寝室に移した瞬間、編集は「休憩の続き」ではなく「寝る前にわざわざ始める作業」に変わっています。やることは1ミリも変わっていないのに、続かなくなりました。
AIやツールの話をする前に、この種のつまずきがあります。道具を増やしても、動線が悪ければ同じことが起きます。
📱 5. それでも、AIはもう日常に入っていた
「自発的には使っていない」とおっしゃる三太さんですが、日常の中では、すでにAIに触れています。
たとえば買い物です。何を買うか迷ったときにスマートフォンのGeminiに相談すると、「これがコスパがいいです」と候補を返してくれる。画像で調べる、音声で入力する、といった使い方も日常的にされています。
つまり「使っていない」のではなく、「使っていると認識していない」状態でした。この距離感が、これから始める農家のいちばん多い現在地なのだと思います。第2回では、この日常のAIをもう少し詳しく伺います。
予約や問い合わせの対応は、いまも負担のままです。三太さんは「俺はすごく負担に感じますね、特に電話が嫌いなので」とおっしゃいます。ブルーベリーの予約は1か月で10件弱。1組が5人、2家族で12人ということもあり、妻も仕事をしながら対応されています。
梅は一見さんお断りで続けていますが、それも人間関係のお付き合いから始まったため無下に断れず、作業量と収益が見合っているかは微妙とのこと。家族経営では、作業が止まることも人間関係の葛藤も、そのまま一人の負担として残ります。この連載は、ここが解決した話ではありません。
三太さんは「サンタのトコロ」として、農園の日々をYouTubeで公開されています。記事では伝えきれない鶏舎や畑の様子は、ぜひ動画でご覧ください。
まとめ
- 現在地はAI成果ゼロ:この連載は「使いこなしている農家」ではなく、これから始める農家の出発点の記録です
- 9000坪は構想の産物ではない:親の代で荒れ地に戻った土地を、もう一度開墾し直した結果です
- 忙しさは減らず、質が変わる:夏は配達と草刈り、冬は除雪と送迎。手が空く季節がありません
- 時間泥棒は「整理整頓」だった:自分で測って初めて、記録に残らない時間が見えてきました
- 止まった原因は動線:YouTubeの更新が遅れたのは、やる気ではなくパソコンの置き場所でした
⏱ 今日からできる5分アクション
三太さんも、最初は自分の作業時間を測るところから始めました。あなたも、今日いちばん地味だった作業を1つ思い出してみませんか?
- 今日、記録に残っていない作業を1つ思い出す
(例:片付け、探しもの、荷物の移動) - その作業だけ、明日1日ストップウォッチで測ってみる
(例:スマホの標準アプリで十分です) - いま続いていない作業があれば、「やる気」ではなく置き場所を1つ変えてみる
(例:パソコンを作業場所の近くへ戻す)
📂 AI成果ゼロからの出発点シリーズ(全3回)
- Vol.1寝室にPCを置いたら、YouTubeが止まった📍 今回
- Vol.2「効率化はしたい。でも、言葉は任せたくない」🔜 公開予定
- Vol.3「皿洗いの時間」を測り始めた農家🔜 公開予定

yamon(農業AI通信 取材陣)
💬読者の声をお聞かせください
この記事へのご感想や、「こんなAI活用を知りたい」というリクエストをお待ちしています。
※ この記事はAIツール(ChatGPT・Claude等)を活用して作成し、編集部が内容を確認・編集しています。お名前・農園名は、ご本人の許諾を得て実名で掲載しています。ご家族のお名前は伏せています。

