【第6弾】AI料理と人間料理を、食べ比べてみた 〜 同じ野菜から、AIと人はどこへ向かったのか 〜

連載🧪 AIレシピ実験室 〜今、冷蔵庫にあるもので〜
Vol.6 / 全6回

実践テンプレ初級

AI料理と人間料理を、食べ比べてみた

〜 同じ野菜から、AIと人はどこへ向かったのか 〜

#レシピ#生成AI入門#食べ比べ

同じ野菜。
違う料理。

Vol.5では、料理経験が多いほうではないAIチームが、材料写真から5品を完成させるまでを公開しました。あの記事では、味の話を一度もしていません。

今回がその答え合わせです。同じ日、同じ樫村ふぁーむさんの野菜を使って、人間チームも料理を作っていました。並べて食べてみると、おいしい・おいしくないでは説明できない違いが出ています。

AIは素材の個性を残す方向へ、人は食べやすさの方向へ寄せていた。全6回の最終回は、その話です。

Vol.6今回のテーマ

🍽 同じ野菜から生まれた2チームの料理を、並べて食べた。勝ち負けではなく「どこへ向かったか」の違いを見る

Vol.4で公開した実験計画書が、実際にはどこまで実行できたのかも正直に書きます。最終回です。

🧪

⚠️ はじめに、この記事の限界から書きます

食べ比べの話に入る前に、この記録で言えないことを先に並べます。あとから小さく書くより、先に大きく書いたほうが読みやすいからです。

  • 目隠しでの試験ではありません。一部の参加者は、調理中にどちらがAIチームの料理か見ていました
  • 点数をつけていません。残っているのは、試食中に出た言葉と、両チームの工程の記録だけです
  • 1回だけの記録です。2026年8月30日の体験キッチン、その1回分です

ですので、この記事に「AIが勝った」「人間が勝った」は出てきません。順位も出てきません。書けるのは、同じ野菜がどちらへ向かったか、それだけです。

調理室のテーブルを真上から見た様子。2つのテーブルにそれぞれ大皿と小鉢が並び、2チームぶんの料理が置かれている
同じ野菜から生まれた、2チームの料理。大皿が主菜、小鉢が取り分けたぶんです。ここから食べ比べが始まりました
🧪

🥗 同じ野菜が、こう分かれました

まず、全体を一覧にします。左がAIチーム、右が人間チームです。人間チームの料理名は、記録に残っている範囲だけを書いています。

主役の野菜 AIチーム 人間チーム
空心菜 梅レモンおひたし にんにくオイスターソース炒め
モロヘイヤ ねばとろ卵だし 中華スープ
なす にんにくとベーコンのガーリック焼き サラダチキンと梅ポン酢和え
ゴーヤ 卵のやさしい塩昆布チャンプルー 下ゆでで苦味を抜いたゴーヤ料理
じゃがいも・玉ねぎ 塩昆布チーズガレット 同じ食材の料理はなし

比べられたのは上の4組です。ガレットだけ相手がいませんでした。この「相手がいなかった1品」が、最後にいちばん効いてきます。

🧪

🌿 空心菜:AIは、炒めなかった

最初の驚きは、いちばん定番の野菜で起きました。

AIチーム

空心菜の梅レモンおひたし

火を通して、梅とレモンで和える。炒め物ではありません。

人間チーム

空心菜のにんにくオイスターソース炒め

にんにくとオイスターソースで強めに炒める、王道の一皿。

空心菜といえば、にんにく炒めです。人間チームは迷わずそちらへ行きました。AIは、そこへ行きませんでした。

試食で出た言葉は「梅がちょうどいい」「居酒屋でも出てきそう」「夏にいい」でした。定番から外れた案が、意外性と季節感で受け止められています。

ただし、ここを「AIのほうが発想が豊か」と読むのは早いと思っています。人間チームがにんにく炒めを選んだのには理由があります。食べ慣れている、外さない、その場の全員がだいたい好き。AIは発想が自由なのではなく、この理由を持っていないのです。

🧪

🥒 ゴーヤ:苦味を残すか、抜くか

今回いちばん分かりやすい対比が、ここでした。

AIチーム

ゴーヤと卵のやさしい塩昆布チャンプルー

塩もみを省き、苦味を残したまま卵と塩昆布でまとめました。

人間チーム

下ゆででしっかり苦味を抜いたゴーヤ料理

塩、砂糖、下ゆで。苦味を抜くための下処理を先に置きました。

AI側の塩もみを省いたのは、AIの指示ではありません。実物をかじってみたら、苦味が思ったより穏やかだったからです(この判断の経緯はVol.5に書きました)。

試食では「嫌な苦味ではない」という反応でした。一方で、苦手な人にははっきり苦いとも言えます。人間チームの下ゆでは、そこを最初から潰しにいっています。

どちらが正しいのでしょうか。答えは、誰が食べるかで変わります。小さな子どもや、ゴーヤが苦手な人が混ざる食卓なら抜く。ゴーヤを選んで買った人へ出すなら、残したほうが喜ばれる。同じ野菜、同じ日、正解が2つあったということです。

🌾
農家の場合だと

直売所のPOPに「このゴーヤ、苦味しっかりあります」と書けるかどうかは、味の問題ではなく誰に売るかを決めているかどうかの問題です。決めていれば、苦味は欠点ではなく選ぶ理由になります。決めていないと、苦味はクレームの種にしか見えません。

🧪

🌱 モロヘイヤ:刻んだら、粘りが変わった

同じ野菜で、工程だけが違った例です。

AIチーム

モロヘイヤのねばとろ卵だし

茹でる → 冷やす → 細かく刻む → 最後に加える。生姜の効いた和風の味。

人間チーム

モロヘイヤの中華スープ

比較的そのままスープへ。刻んで粘りを立てる工程は入れていません。

結果、AI側は粘りがしっかり出ました。刻む工程が、そのまま食感になっています。味も好評でした。

同時に、「少し味が濃い」という声も出ています。ここは書いておきます。Vol.5で「AIは既製調味料で味をまとめたがる」と書きましたが、その弱点が出たのが同じ料理でした。めんつゆや白だしは、商品によって濃さが変わります。人が最後に味見して薄める、という一手が要ります。

それでも、この1品で分かったことがあります。AIレシピは、味だけでなく食感を作りにいっていた。刻む・冷やす・最後に加える。この3つは、粘りを出すためにわざわざ置かれた工程でした。

🧪

🍆 なす:レシピより、素材が勝った

AIチーム

樫村なすとにんにくのベーコンガーリック焼き

焼いて、にんにくとベーコンの香りをまとわせるだけ。味付けは足しすぎていません。

人間チーム

なすとサラダチキンの梅ポン酢和え

たんぱく質を足して、さっぱりまとめる組み立て。

AI側の試食で出た言葉は、料理の感想ではありませんでした。「なす自体がおいしい」。柔らかさと、なすそのものの味への反応です。

これは正直に書いたほうがいいと思っています。AIがおいしくしたのではありません。レシピが、素材の良さを邪魔しなかったのです。味を足しすぎない設計だったから、なすの味が前に出ました。

農産物を売る側から見ると、ここは大きい話です。良い野菜ほど、レシピは引き算になる。濃い味付けのレシピを添えると、その野菜でなくてもいい料理になってしまいます。

🧪

🥔 ガレット:ただ1つ、比べる相手がいなかった料理

白い皿2枚に盛られた、きつね色に焼き上がったじゃがいものガレット。細切りのじゃがいもと玉ねぎ、塩昆布が混ざって焼き固まっている
じゃがいもと玉ねぎの塩昆布チーズガレット。水にさらさず、でんぷんでまとめています。粉は使っていません

人間チームに、じゃがいもを使った料理はありませんでした。この1品だけは、食べ比べの枠の外にあります。

そのうえで書くと、試食で最も強い反応が出たのはこの料理でした。「本当に美味しい」「リピートあり」「準備すれば簡単」。塩昆布が前に出すぎず、チーズとじゃがいもになじんでいたこと、そして水にさらさずでんぷんでまとめる工程が評価されています。

ただし、「総合1位」とは書けません。順位をつける形で食べていないからです。書けるのは「単品でいちばん強い反応が出た」まで。

面白いのは、この料理が今回の5品のなかで唯一、素材の個性を残す側ではなかったことです。じゃがいもも玉ねぎも、細切りにして焼き固めてしまえば、素材の輪郭はほとんど残りません。加工して食べやすくする側の料理です。ここが、最後の結論につながります。

🧪

📋 Vol.4の実験計画書は、どこまで実行できたのか

Vol.4で、「AIレシピは“人の舌”に勝てるか?」という問いと、その実験計画書を公開しました。最終回なので、そこへ戻ります。

結論から書きます。この日の条件では、その問いは判定できませんでした。

Vol.4で計画したこと 実際にどうなったか
AI案と人間案を食べ比べる ✅ 実施した。同じ野菜から両チームが作り、並べて食べた
どちらがAI側か伏せて評価する ❌ できなかった。一部の参加者は調理中に見ていた
ゴーヤの塩もみあり/なしを比べる ❌ 実施していない。実物の苦味が穏やかで、塩もみなしを選んだため
点数をつけて比べる ❌ していない。残ったのは、試食中の言葉と工程の記録

とくに3つ目です。ゴーヤの塩もみ比較は、この実験計画のいちばん中心にありました。それが実施されなかった理由は、失敗でも手抜きでもありません。「苦味を取るべきか」という問いの前提そのものが、この日のゴーヤには当てはまらなかったのです。

ここから持ち帰れることが1つあります。

🎯 実験の設計は、現物を見る前には確定できない。先に組んだ「あり/なし」の比較は、現物が想定と違った瞬間に、やらない以外の選択肢を持ちません。

そしてこれは、Vol.5で書いたことと同じ形をしています。時間で固めた手順より、焼き色を見て決めるほうが強かった。台所でも、実験計画でも、先に固めるより、その場で分かれられるほうが強いのです。

💡
次にやるなら、こう直します

比較実験を計画に入れるときは、「現物が想定どおりだったら実施する」という条件を最初から書いておく。そして、実施できなかったときに何を代わりに記録するかも、先に決めておきます。今回はそこが無かったので、データが1つ丸ごと消えました。

🧪

🔍 AI料理に共通していた、3つの傾向

5品を並べると、AI側のレシピには同じ癖が見えました。

01

既製の調味料で、味をまとめにいく

めんつゆと塩昆布が、5品のうち複数に登場しました。初心者でも味が決まりやすいという点では正しい設計です。一方で、メーカーや濃縮率で濃さが変わるため、そのまま入れると濃くなることがあります。モロヘイヤで実際に出ました。

02

素材そのものを、残そうとする

ゴーヤの苦味、モロヘイヤの粘り、なすの味。消さずに前へ出す設計が続きました。良い野菜が手元にあるときは、この方向が効きます。

03

定番の外側から入ってくる

空心菜を炒めない。この日でいちばん象徴的でした。定番を知らないのではなく、定番を選ぶ理由を持っていないのだと思います。

逆に、人間チームが強かったところもはっきりしていました。量の調整、味見、食べる相手への配慮、そして食材や味が重ならないように献立を組むこと。どれも、その場に人がいないとできない仕事です。

🧪

🎯 結論:AIは「食べる人」を知らない

5品を並べて見えたのは、上下ではなく方向でした。

AI側が向かった先 人間側が向かった先
素材の個性を残す みんなが食べやすくする
定番の外から案を出す 外さない定番を選ぶ
工程で食感を作る 味見で濃さを整える

どちらも正しいのです。決めているのは料理の腕ではなく、「誰が食べるか」という一点です。

そして、この連載を通していちばんはっきりしたのは、AIが知らないのは、まさにその一点だったということでした。

Vol.5で書いたとおり、写真を送れば、焼き色も、混ぜ具合も、次に進んでよいかも判断できます。AIが決められないのは、火加減ではありませんでした。目の前にいる人が、苦いのが苦手かどうか。それは写真に写りません。

だからレシピを頼むときは、材料より先に、食べる人を渡したほうがいい。最終回でたどり着いたのは、この一行です。

🧪

📄 最終回の配布:食べる人を、先に決めてから頼む

Vol.5では「材料写真から候補を作る」「調理中に写真で相談する」の2本を配りました。最後の1本は、その手前に置くものです。

📄 食べる人を先に決めてレシピを頼む(配布⑥)
これから【野菜名】を主役にした料理を考えてもらいます。
食べるのは【誰】です。先に、次の条件を伝えます。

・苦味/辛味/酸味は、残したいか、抑えたいか
・避けたい食材(アレルギー、苦手なもの)
・食べる場面(家庭の食卓/人に出す/持ち寄り)
・作る人の経験(初めて/慣れている)

そのうえで、候補を3案出してください。
各案に、次の2つを1行ずつ付けてください。
・この条件のどこに合わせたか
・この案で我慢していること

条件から外れる案を勧めたい場合は、その理由も書いてください。

⚠️ 「この案で我慢していること」を書かせるのがポイントです。どの案にも必ず捨てているものがあります。それが見えると、選ぶのが一気に楽になります。

🧪

🍽 全6回、これで完結です

調理室のテーブルを真上から見た様子。大皿に盛られた炒め物やおひたし、小鉢に取り分けられた料理が縦に並んでいる
食べ比べのテーブル。大皿から小鉢へ取り分けて、同じ野菜どうしを並べて食べました

冷蔵庫の中身をAIに渡すところから始まった連載は、ここで終わりです。6回を通して残ったのは、AIが台所から人を追い出す道具ではなかったという結論でした。知らない野菜の前で立ち止まった人へ、選択肢と次の一手を渡す。決めるのは、最後まで人のほうでした。

🧪

✅ まとめ

今回のポイント

  • 同じ野菜から、AIは素材の個性を残す方向へ、人は食べやすさの方向へ寄せた。上下ではなく方向の違い
  • ゴーヤは苦味を残すか抜くかで正面から分かれた。正解は、食べる人が誰かで変わる
  • モロヘイヤは刻む工程が食感を変えた。ただし「少し味が濃い」という声も出た
  • なすで出た言葉は「なす自体がおいしい」。AIがおいしくしたのではなく、レシピが素材を邪魔しなかった
  • Vol.4の実験計画は4つ中1つしか実行できなかった。実験の設計は、現物を見る前には確定できない
  • AIが知らないのは火加減ではなく、目の前の人の好み。だからレシピは、材料より先に食べる人を渡す

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💬読者の声をお聞かせください

全6回を読んでのご感想や、「うちでも同じ野菜で食べ比べてみた」というご報告もお待ちしています。




最後までお読みいただきありがとうございます。農業AI通信では、農家さんと生活者の「困った」を解決するAI活用情報を発信しています。

※ 本記事の一部はAIを活用して執筆しています。本記事は2026年8月30日に実施した体験キッチン1回分の記録であり、目隠しでの比較試験ではありません。点数づけや順位づけも行っていないため、どちらが優れているかを示すものではありません。調理の際は、食材の状態・加熱・卵・アレルギーなど食品衛生上の最終確認を必ずご自身で行ってください。めんつゆ・白だしなどの調味料は、商品によって濃度が異なります。

農業AI通信 | 🧪 AIレシピ実験室 〜今、冷蔵庫にあるもので〜 Vol.6 © 2026 Metagri研究所
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