料理初心者が、旬野菜で5品を作れた理由
〜 農家の詰め合わせ野菜を、AIと相談しながら献立にするまで 〜
レシピはもらえた。
それでも、手が動かない。
Vol.4では、AI案と人間案を食べ比べる実験計画書を公開しました。ただ、計画書には書いていなかったことが1つあります。料理ができあがらなければ、食べ比べは始まらないということです。
2026年8月30日、Metagri体験キッチンで実際に手を動かしたAIチームは、料理経験が多いほうではない2人でした。空心菜もモロヘイヤも、普段の台所には出てこない野菜です。それでも5品を最後まで作り切りました。
今回は味の話をしません。その5品が完成するまで、AIをどう使ったのかだけを公開します。
🎯 材料の写真を撮るところから、5品が完成するまで。初心者がAIへ「何を、いつ聞いたか」を全部見せる
レシピを受け取る話ではなく、受け取ったあとに手が止まったとき何をしたかの話です。使ったプロンプトも2本配布します。
🥬 出発点は、届いた野菜を並べて撮った1枚
この日の食材は、樫村ふぁーむさんから届いた旬野菜の詰め合わせでした。何が入っているかは、開けるまで分かりません。
最初にやったことは、レシピを検索することでも、AIに「何か作って」と打つことでもありませんでした。調理台に全部並べて、写真を1枚撮る。それだけです。

文字で書こうとすると、「なす3本」「モロヘイヤ1袋」と打ち込むことになります。でも1袋がどれくらいの量なのかは、書いた本人にしか分かりません。写真なら、そこを説明しなくて済みます。
Vol.1では、冷蔵庫の中身を書き出して渡す型を配りました。今回はその入力を写真に置き換えただけです。型の中身(人数・時間・器具・使い切ること)は変わりません。変えたのは、渡し方だけです。
料理以外の目的も、一緒に渡した
渡したのは材料写真だけではありません。この日、何のために作るのかも一緒に伝えています。
- 樫村ふぁーむさんの野菜を主役にしたい
- 体験キッチンの参加者が試食する
- 将来のカフェメニューの候補を探している
- 作るのは料理初心者である
- 肉・チーズ・卵は主役ではなく、野菜を食べやすくする補助役に留めたい
この5行があるかないかで、返ってくる案は変わります。「野菜を使い切るレシピ」とだけ伝えると、野菜が主役から降りた料理も混ざってきます。
🍳 AIの候補から、選んだのは人だった
ここが今回いちばん誤解されやすいところです。AIに「今日の献立を決めて」と丸投げしたのではありません。
やったのは、この順番です。
複数の候補を出してもらう
1案ではなく複数案。この時点では、まだどれも採用していません。
2人で「これはいい」「これは違う」を言い合う
判断の理由は、作れそうか・食べたいか・野菜が主役かの3つでした。
まず3品だけ決める
ガレット、ゴーヤ、モロヘイヤ。5品を最初に固定しませんでした。
残った食材を、もう一度見せて2品を足す
空心菜・なす・にんにくが残りました。ここでもう一度相談して、2品を追加しています。
3品を作ってから残りを見たのがポイントです。最初に5品を決めてしまうと、使う量の見積もりが外れたときに献立ごと組み直すことになります。途中で更新できる形にしておくほうが、手元の食材に合わせやすくなります。
この日、完成した5品

💬 調理中に出た「小さいけれど、手が止まる質問」
ここからが本題です。レシピが手元にあっても、手は止まります。
この日、実際にAIへ聞いたのは次の5つでした。どれもレシピ本文には書かれていない、あるいは書いてあっても意味が分からなかったことです。
ボウルの「手もみ」は、何のためにやるのか
手順は読めるが、やる理由が分からないと力加減が決められない。強くもむのか、軽く混ぜるのか。
米油とオリーブオイル、どちらがいいか
レシピに「油」としか書いていない。台所には両方ある。
大さじ1は15mLでいいのか
知っている人には当たり前でも、間違えたら味が決まらないので確認したくなる。
焦げそうなので、3分半で返してよいか
レシピの指定は片面4〜5分。目の前の状態が、書いてある時間より先に進んでいる。
卵は鍋の中に入れるので合っているか
工程は追えるのに、できあがりが想像できないので、自分の解釈に自信が持てない。
この5つを見ると、共通点が見えてきます。「工程が分からない」ではなく、「意味と完成形が分からない」から出た質問です。
そして、これらは先回りして手順書に書き足すことができません。全部書けば書くほど手順書は長くなり、調理中には読まれなくなります。網羅性と、現場での読みやすさは両立しないのです。
同じことが、マニュアルと現場の関係でも起きています。手順書に全部書こうとすると分厚くなり、忙しい時期には誰も開かなくなる。渡すのは読み切れる骨格だけにして、その場で聞ける状態を用意しておくほうが、実際には回ります。
📸 写真を送って解決したこと、しなかったこと
調理中も、入力は写真でした。ボウルの中身や、焼き色を撮って送り、「この状態で次に進んでよいか」を確認しています。
写真が効いた場面


このゴーヤの判断が、今回いちばん象徴的でした。「苦味を取るべきか」という問いの前提そのものが、この日のゴーヤには当てはまらなかったのです。
事前に固めた手順であれば、こうはなりません。決めておいた工程をそのまま実行するか、飛ばすかの二択です。相談しながら進める形だからこそ、現物に合わせて変えられました。
写真でも解決しなかった場面

「モロヘイヤのねばとろ卵だし」で、いちばん時間がかかったのは工程ではありません。スープなのか、あんかけなのか、和え物なのか。完成した姿が想像できなかったことです。
だから「卵は鍋の中に入れるので合っているか」という質問が出ました。工程を読み違えたのではなく、向かっている先が分からないまま手を動かしていたのです。
🎯 この日わかった、4つのこと
完成図は、手順より先に見せる
初めて作る料理では、テキストで書かれた「成功の目印」は効きません。目印が何を指しているかは、完成像を持っている人にしか分からないからです。
順番を入れ替えるだけです。追加の手間はほとんどありません。
「4分」より「この焼き色になったら」
時間が書いてあると、初心者はその数字を守ろうとします。しかしフライパン、火力、具材の厚みで結果は変わります。ガレットは指定の4〜5分を待たず、3分半で返した判断が正解寄りでした(塩昆布とチーズは焦げやすい)。
レシピに書くなら、時間だけでなく「きつね色になり、端が固まったら返す」と状態を併記するところまでがセットです。
AIは、既製調味料で味をまとめたがる
今回の5品では、めんつゆと塩昆布がよく登場しました。初心者でも味が決まりやすい一方で、メーカーや濃縮率によって濃さが変わります。
- 商品表示の希釈率を確認する
- 最初は少なめに入れる
- 最後は人が味見して調整する
この3行を分岐条件としてレシピ側に入れておくと、そのまま作っても大きく外しません。
AIは候補と説明、人は選択と責任
この日の役割分担は、はっきり分かれていました。
| AIがやったこと | 人がやったこと |
|---|---|
| 複数の候補を出す | どれを作るか決める |
| 工程の意味を説明する | 実物の味を確かめる |
| 写真から次の一手を示す | 食べる相手を想像する |
| 分岐の材料をそろえる | 変更したことに責任を持つ |
この日わかったのは、AIが台所から人を追い出す道具ではなかったということです。知らない野菜を前に立ち止まった人へ、選択肢と次の一手を渡す道具でした。ただし1回の体験キッチンの記録です。誰がやっても失敗しない、という話ではありません。
📄 そのまま使えるプロンプトを2本、配布します
この日の使い方を、ご自宅でも再現できる形にしました。献立を決めるときと、調理中に迷ったときの2本です。
これから、手元にある食材と調味料の写真を送ります。 主役にしたい農産物は【農産物名】です。 【人数】人分、【時間】分以内、使える器具は【器具】です。 料理初心者でも作れる候補を3案出してください。 各案に、次の5つを付けてください。 ・料理名 ・主役になる野菜 ・その組み合わせを選んだ理由 ・いちばん難しい工程 ・完成したときの見た目 写真から判断できない材料や量は、推測せずに先に質問してください。
今から調理途中の写真を送ります。次の4点を確認してください。 1. 今の状態で、次の工程へ進んでよいか 2. 火加減や加熱時間を変える必要があるか 3. 成功している状態を、見た目でどう判断すればよいか 4. 食品衛生上、気をつけることがあるか 分からない点は推測せず、追加で撮るべき写真を指示してください。 回答では、時間だけでなく「色・硬さ・水分」など、 目で確かめられる判断基準を示してください。
⚠️ 写真で分かるのは色・形・水分・焼き具合までです。味と、食べる人の好みは分かりません。最後の一口を決めるのは、いつも人のほうです。
🍽 5品、完成しました

ここまで、味の話を一度もしていません。それは意図的です。この記事で見せたかったのは、料理ができあがるまでの使い方だからです。
✅ まとめ
今回のポイント
- 5品が完成したのは、AIが完璧なレシピを一度で書いたからではない。材料・途中の状態・焼き色を見せながら、その都度「次へ進んでよいか」を相談できたから
- 入力は写真。品名を打ち込む代わりに並べて撮るだけで、量・状態・数がそのまま伝わる
- 献立はまず3品、残り食材を見てから2品。最初に全部を固定しないほうが、手元の量に合わせやすい
- 調理中に出た5つの質問は、すべて「工程が分からない」ではなく「意味と完成形が分からない」から出たもの
- 次に活かすことは4つ。完成図を先に見せる/時間でなく焼き色で書く/既製調味料は分岐条件を添える/選ぶのは人
- Vol.1今、冷蔵庫にある食材で。AIに「今夜の一皿」を考えてもらう方法公開済み
- Vol.2AIのレシピ案を「本当に使えるレシピ」に変える判定術公開済み
- Vol.3農家がAIで「消費者へのレシピ提案」を仕組み化する方法公開済み
- Vol.4AIレシピは“人の舌”に勝てるか?実験計画書を公開します公開済み
- Vol.5料理初心者が、旬野菜で5品を作れた理由今回
- Vol.6AI料理と人間料理を、食べ比べてみた近日公開
💬読者の声をお聞かせください
この記事へのご感想や、「うちでも写真を送って相談してみた」というご報告もお待ちしています。
最後までお読みいただきありがとうございます。農業AI通信では、農家さんと生活者の「困った」を解決するAI活用情報を発信しています。
📂 AI×レシピ探究シリーズ(全6回)
- Vol.1今、冷蔵庫にある食材で。 AIに「今夜の一皿」を考えてもらう方法✅ 公開済み
- Vol.2AIのレシピ案を「本当に使えるレシピ」に変える判定術✅ 公開済み
- Vol.3農家がAIで「消費者へのレシピ提案」を仕組み化する方法✅ 公開済み
- Vol.4AIレシピは“人の舌”に勝てるか?実験計画書を公開します✅ 公開済み
- Vol.5料理初心者が、旬野菜で5品を作れた理由📍 今回
- Vol.6AI料理と人間料理を、食べ比べてみた🔜 近日公開
※ 本記事の一部はAIを活用して執筆しています。本記事は2026年8月30日に実施した体験キッチン1回分の記録であり、同じ手順で誰でも同じ結果になることを示すものではありません。調理の際は、食材の状態・加熱・卵・アレルギーなど食品衛生上の最終確認を必ずご自身で行ってください。めんつゆ・白だしなどの調味料は、商品によって濃度が異なります。

