海外ではスマホ選果が始まっている——ならば無料AIで再現できるか試してみた
〜 スマホ+Gemini 3.6 Flashで「明らかな規格外」を見分けられるか、40個×3パターンで検証 〜
前回のおさらい
第1回:1日300kgの選果が止まらない——インターンが見た「選果の壁」を読む →
第1回では、北海道余市町のプルーン農園「PINK ORCHARDS」の選果現場を紹介しました。ピーク時は1日約300kg・約80箱。「見た目の確認」と「重量調整」の二重判断が手を止める——そこで立てた問いが「見た目の判定をAIに任せれば、作業全体は本当に速くなるのか」でした。
今回のテーマ
海外事例を調べて、手元のスマホと無料AIで実証してみた
海外のスマホ果実スキャン事例をヒントに、スマホ+Gemini 3.6 Flashで「正常/明らかな規格外」の二分類に挑戦。3パターン×各40個の判定結果を、そのままの数字で公開します。
🎯 この記事でわかること
- 海外で始まっている「専用機を使わないスマホ選果」の考え方
- スマホ+無料で試せる生成AIで組んだ、検証セットアップの全手順
- 見本画像6枚+判定ルールで、AIはどこまで見分けられたか(実測値)
- 「全体正答率75〜80%」なのに現場では喜べない理由
⚠️
検証条件の注意(先にお読みください)
本記事の数値は、各条件40個・見本や指示の調整過程を含む小規模な試行の参考値です。見本用と評価用の果実を完全に分離した独立精度評価ではありません。また、AIだけで出荷判断はせず、最後は人が確認することを前提にお読みください。
1) 海外では「専用機を使わないスマホ選果」が始まっている
今回はいよいよAIでの検証ですね。まず、参考にした事例から教えてください。

yamon
南アフリカのAerobotics社が提供している「TrueFruit Bin Scan」という仕組みです。専用の高額な選果機を使わず、ビンやクレートの上層に見える果実を撮影して、サイズ・傷・色の分布を分析するサービスだと紹介されています。
「大がかりな設備がなくても、カメラと分析だけで選果の手前まではできるのか」と思ったのが、今回の検証のきっかけです。
Aerobotics「TrueFruit Bin Scan」(南アフリカ)
- 専用の高額機器を使わず、ビン内の上層に見える果実を撮影して分析
- サイズ・傷・色の分布を把握し、選果前の見立てに使う
企業公表値「測定が10倍速い」「パックアウトが最大5%向上」は同社の公表値であり、今回の検証結果と直接比較できるものではありません。あくまで発想の参考として紹介しています。

Aerobotics「TrueFruit Bin Scan」のイメージ(出典:Aerobotics公式サイト)
その発想を、そのまま余市の農園で試したわけですね。

yamon
はい。ただし、いきなり全部は無理なので対象を「正常/明らかな規格外」の二分類だけに絞りました。重量調整や等級分け、完全自動化は今回の対象外です。
問いは「手元のスマホと、無料で試せる生成AIだけで、どこまで再現できるか」。それだけに集中しました。
2) 検証セットアップ:スマホをカメラに、Gemini 3.6 Flashを判定役に
1
判定役
Google AI Studio上のGemini 3.6 Flash(コード実行を有効化)。画像を切り抜き・拡大・注釈しながら確認できるのが選んだ理由。
2
カメラ
手持ちのスマホをWebカメラ化するアプリ(Camo Cameraなど)で接続。選果机の上30cmほどの高さに固定した簡易構成。
3
教えた内容
見本画像6枚(正常品2・割れ傷2・変形2)と、農園の判定ルールの文章をセットで提示。
4
出力形式
検出した総数・各個体の合否・理由・位置座標をJSON形式で返すよう指定。
ここは大事なポイント:モデル自体を再学習させたわけではありません。同じ会話の中で見本と文章のルールを与えて、判定条件を調整していった(文脈内での調整)という形です。

左から、正常品、規格外品(変形)、規格外品(割れ・傷)
判定ルールには、どんなことを書いたんですか?

yamon
第1回で言葉にした、農園の基準をそのまま文章にしました。
合格は「正常な楕円形・卵型」「わずかな左右非対称(自然な個体差)」「ブルーム(白い粉)」「軽微なかさぶた状の擦れ」。規格外は「割れ・深い亀裂(裂果)」「片側が極端に潰れたような凹み」「ひょうたん状・ハート型の著しい歪み」です。
第1回で「基準の言語化」をやっておいたことが、そのままAIへの指示文になりました。
🔁 今回の判定フロー
選果机の上30cmに固定し、プルーンを撮影
↓
見本6枚+判定ルールと一緒に画像を送信
↓
総数・合否・理由・位置座標をJSONで出力
↓
出力を人の判定と突き合わせて正誤を記録

Gemini Agentic Visionでの解析イメージ
3) 検証結果:3パターン×各40個の実測値
では、結果を数字で見せてください。

yamon
置き方と判定方法を変えた3パターンで、各40個ずつ判定しました。数字はそのまま載せます。
| 判定パターン | 検証総数 | 全体正答率 | 規格外品の検出率 | 見逃し | 過剰検出 |
|---|---|---|---|---|---|
| AI Studio手動(整理して配置) | 40 | 80.0%(32/40) | 50.0%(6/12) | 6 | 2 |
| AI Studio手動(バラバラに配置) | 40 | 75.0%(30/40) | 55.6%(10/18) | 8 | 2 |
| Python+Gemini API(バラバラに配置) | 40 | 80.0%(32/40) | 27.3%(3/11) | 8 | 0 |
※実際に出荷するプルーンを使用。触りすぎるとブルームが落ちるため、各試行では別の果実を使っています。見本・指示の調整過程を含む参考値です。Python版の詳細は第3回の技術メモで扱います。
75〜80%
合否がひととおり合っていた割合
27〜56%
現場で一番大事な「見つけてほしい実」の検出率
4) 一次評価:「8割当たる」を現場ではまだ喜べない
全体正答率75〜80%というのは、初めての検証としては悪くない数字にも見えますが。

yamon
そこが落とし穴でした。選果で本当に見つけたいのは、数の少ない規格外のほうなんです。その検出率が27〜56%だと、結局は人が全部見ることになる。時短効果は今回確認できていません。
一方で、置き方を変えただけで数字が動いたのも事実で、「AIの実力」というより撮影条件や置き方の問題ではないかという感触がありました。
その「なぜ見逃すのか」は、次回で。

yamon
はい。実は、バラバラに置いた瞬間に位置認識そのものが崩れて、枠を合わせるだけで約3時間かかりました……。次回は、その失敗の中身を全部お見せします。
まとめ
- 海外では専用機を使わずスマホ撮影で果実を分析する事例がある(数値は企業公表値・直接比較はしない)
- 手元のスマホ+Gemini 3.6 Flashで、「正常/明らかな規格外」の二分類に絞って検証
- 見本画像6枚+判定ルールを提示。ただし再学習ではなく、同じ会話内での調整
- 結果は全体正答率75〜80%、規格外検出率27〜56%。見逃しの多さが最大の課題
- 「なぜ見逃したのか」は第3回で深掘り
⏱
5分で試せるアクション:手元の農産物1個で「規格外判定」を試してみる
いきなり複数個は難しいので、まずは1個だけ・無地の背景で撮って、画像判定AIに送ってみてください。
あなたは【作物名:例 プルーン】の選果AIです。 添付した写真の果実が「正常」か「明らかな規格外」かを判定してください。 【判定基準】 ・合格: - 正常な形(自然な個体差はOK) - 【正常でも出る特徴:例 ブルーム(白い粉)】があるもの ・規格外: - 【基準1:例 割れ・深い亀裂】 - 【基準2:例 極端な変形・潰れ】 - 【基準3:例 大きな傷】 【出力形式】 1. 判定(合格/規格外) 2. 判定理由(どこを見てそう判断したか) 3. 判定に自信がない場合は「保留」とし、確認すべき点を書く
ポイント:判定基準は自分の農園の言葉に書き換えてください。第1回で作った「規格外基準メモ」の3行が、そのまま【基準1〜3】に入ります。写真に人物・住所・伝票・車のナンバーが写り込まないよう注意してください。
📚 参考情報
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📂 プルーンAI選果 検証記(全3回)
- Vol.11日300kgの選果が止まらない! 北海道のプルーン農園でインターンが見た「選果の壁」✅ 公開済み
- Vol.2
海外ではスマホ選果が始まっている! ならば、無料AIで再現できるか試してみた
📍 今回 - Vol.3AIはなぜ規格外を見逃したのか? 3時間の格闘でわかった「まだAIに任せられないこと」✅ 公開済み

