記録・段取り・販売まで!
― これから広げるAI活用
商品の「これまで」から、事業を回す「これから」へ。
平飼い卵を主役にした「全卵ジェラート」。Vol.1では差別化の発想を、Vol.2ではレシピと道具選びの試行錯誤を追ってきた。商品の輪郭が固まれば、次に待っているのは“続けて売る”ための仕組みづくりだ。
最終回のテーマは、記録管理、製造計画、そして販売とコミュニティ──吉田さんが思い描く、AI活用のこれからの構想を聞いた。ここでもAIは、ド素人が一歩を踏み出すための“壁打ち相手”であり続ける。
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この連載について
養鶏農家・吉田さんが、自慢の平飼い卵を「ジェラート」という専門外の商品に育てていく過程を、全3回で追う連載です。本人も「ド素人」と語るところからのスタート。だからこそ、AIをどう“壁打ち相手”にしながら一歩を踏み出したのか──そのリアルな実践を、これからAI活用に挑む農家のヒントとしてお届けします。
Vol.3のテーマ商品開発の「これまで」から、事業を回す「これから」へ。記録・段取り・販売にAIを広げる

吉田裕史
① HACCP対応 ── 記録管理を「まるごと仕組み化」する
食品製造に欠かせないのが、HACCPに沿った衛生管理だ。ジェラートは加熱殺菌の工程が重要で、「どのロットを、どの温度で管理して殺菌したか」を記録し続ける必要がある。吉田さんが構想しているのは、この記録管理をまるごと仕組み化することだ。
記録管理は、どんな仕組みを思い描いていますか?

吉田
このジェラートを、このレシピで、この日作りますと入力したら、あとから加熱温度のデータを紐づけたり、表示シールの作成までできる。そういう管理システムが全部できるかなと。
成分表示のシールも悩みのタネだ。乳脂肪の割合で「氷菓/ラクトアイス/アイスミルク/アイスクリーム」と区分が変わるため、レシピを選べば表示が自動で切り替わる仕組みを思い描いている。

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読者へのヒント
「記録・管理・表示」のような、間違えられないけれど手間のかかる作業こそ、AIや仕組み化の出番だ。いきなり完璧なシステムを目指すより、「入力したら、後工程のデータや書類が自動でついてくる」という“つながり”を1本描くところから始めると、構想が一気に具体的になる。
② 「寝かせ」を読み込んだ製造計画
ジェラートづくりには、加熱の工程と、凍らせる工程がある。加熱後に1〜2日ほど置くと味が馴染むとされ、その工程が別日になるぶん、製造計画が一気に複雑になる(吉田さん自身は「どれくらい本当かはまだ検証できていない」と話す)。
製造計画で、AIに期待しているのは?

吉田
どのフレーバーを何キロ、この日に作って、こっちの日にこのフレーバーを何キロ……という計画を、AIで作れるといいなと思っています。
見込みと予想をもとに、最適な生産計画の“たたき台”を先回りで用意する。ここでもAIは、判断を助ける相棒として期待されている。
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読者へのヒント
段取りが複雑になるのは、たいてい「制約条件」が多いからだ(寝かせが必要、設備が1台、別日作業…)。その制約を箇条書きでAIに渡すと、人間が頭の中で組むより速く、計画の“たたき台”を出してくれる。AIに丸投げするのではなく、“前提を渡して下書きさせる”のがコツだ。
③ 販売の広げ方 ── 物販・ふるさと納税・定期便
店舗を持たない吉田さんにとって、販売の主戦場は物販だ。ふるさと納税や、季節で中身が変わる定期便も視野に入れる。
販売は、どう広げていく構想ですか?

吉田
冬はローストチキン、夏はジェラート、というように年間で届ける。限定数の高価格帯パックみたいなものも、ひとつ置いておくといいかなと。
鶏肉とジェラート──自分の手元にある資源を組み合わせ、「一年を通して届く」形をつくる。単発の商品ではなく、関係が続く売り方を描いている。
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読者へのヒント
販売チャネルを考えるときは、「単発で売る」より「関係が続く形(定期便・年間・ふるさと納税)」を一つ持てないかを考えてみよう。AIに「自分の商品ラインナップと季節性」を伝えて、年間で途切れない届け方のパターンを一緒に洗い出すと、思わぬ組み合わせが見えてくる。
④ フレーバーとコミュニティ ── 地域の農家とのコラボで広げる
フレーバー展開では、地域や仲間の生産者とのつながりが鍵になる。社員が副業で育てるミカン、知り合いのサツマイモ……自分の卵を主役にしながら、まわりの食材と掛け合わせて新しい味を生み出していく。そして吉田さんがいま大きな可能性を感じているのが、Metagri研究所に参加する農家の野菜や果物とのコラボだ。
フレーバーは、どんなふうに広げていきたいですか?

吉田
卵と合わせていいなら、ほかの農家さんのフレーバーを作ったりできるかなと。
筆者が「トマトとか面白いですよね」と水を向けると、吉田さんも「いいですね」と前向きに応じた。卵という主役は変えずに、相手の食材を掛け合わせる。単独の商品ではなく、農家どうしのつながりが新しいフレーバーを生み、関わった生産者それぞれの思い入れも広がっていく。Metagri研究所のような農家コミュニティは、その“掛け算の相手”と出会う場にもなる。

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読者へのヒント
商品の幅は、自分一人の中だけでなく「誰と組むか」で広がる。自分の主力素材(吉田さんなら卵)に地域や仲間の食材を掛け合わせると、一人では思いつかないフレーバーが生まれる。AIに「この素材と相性のいい組み合わせは?」と壁打ちしつつ、コミュニティで相手を探すと、コラボの一歩を踏み出しやすい。
⑤ おわりに ── AIは「踏み出す前の壁打ち相手」
歴史調査、レシピ設計、道具選び、そしてこれからの記録管理や販売まで。吉田さんのジェラートづくりを通して見えてきたのは、AIの一貫した役割だ。
それは、専門外の分野に踏み出すド素人にとっての「最初の壁打ち相手」。答えそのものではなく、判断の物差しと、たたき台を素早く差し出してくれる存在である。そして時には「違う」と根拠を持って止めてくれる。最後に決めるのは、生産者自身の経験と、現場での試行錯誤だ。
平飼い卵が、これまで日本になかったジェラートになる。その舞台裏には、AIと人の心地よい距離感があった。
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読者へのヒント
AI活用は「すごい正解を出させること」ではなく、「踏み出す前のハードルを下げること」から始めていい。調べる・比べる・下書きする──その“最初の一歩”をAIに手伝ってもらえば、専門外の挑戦もぐっと現実的になる。決めるのは、いつだって現場を知るあなた自身だ。
🧾 まとめ:Vol.3で描いた「これから」
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| テーマ | 商品開発の「これまで」から、事業を回す「これから」へ。記録・段取り・販売にAIを広げる |
| HACCP・記録管理 | レシピ・製造日を入力すると、加熱温度データの紐づけや表示シール作成まで自動化する仕組みを構想 |
| 製造計画 | 加熱後1〜2日の「寝かせ」を織り込み、フレーバー別・日別の生産計画のたたき台をAIで作る |
| 販売 | 物販を主軸に、ふるさと納税・季節の定期便(冬はローストチキン/夏はジェラート)・高価格帯の限定パック |
| コミュニティ | 自分の卵を主役に、地域・仲間の食材とコラボ(ミカン・サツマイモ)。Metagri研究所に参加する農家とのフレーバーコラボに可能性 |
| 連載の結論 | AIは「踏み出す前の壁打ち相手」。物差しとたたき台をくれ、最後に決めるのは生産者自身 |
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5分で試せるアクション:これからやりたい“面倒な段取り”を、ひとつAIに「計画のたたき台」として相談してみよう
- これから取り組みたい「手間がかかって後回しにしている段取り」を1つ書き出す
- 前提・制約(守るべきルール、設備、日数など)を箇条書きでAIに渡す
- 「この条件で、計画(または管理表)のたたき台を作って」と頼み、出てきた案を自分で直す
ゼロから組むより、“直す”ところから始めるほうが、面倒な仕組みづくりは一気に動き出す。
🎬 連載を終えて(全3回の振り返り)
| # | テーマ | AIが果たした役割 |
|---|---|---|
| Vol.1 | 歴史・着想 | “当たり前”の理由を歴史までさかのぼって解き明かし、差別化の余地を照らす |
| Vol.2 | レシピ・道具 | 専門外の「選ぶ基準」と「あたり」を示し、試行錯誤の壁打ち相手になる |
| Vol.3 | 記録・販売 | 記録・段取り・販売の“たたき台”を先回りで用意し、事業化を後押しする |
一貫していたのは、「AIは答えではなく、考えるための壁打ち相手」という距離感。ド素人が新しい一歩を踏み出すとき、その最初のハードルを下げてくれる──それが、吉田さんのジェラートづくりが教えてくれたことだった。
📂 シリーズナビ(全3回)
| # | テーマ | タイトル | ステータス |
|---|---|---|---|
| Vol.1 | 歴史・着想 | なぜ“全卵ジェラート”は存在しないのか ― AIと辿る卵とジェラートの歴史 | ◀ 第1回 |
| Vol.2 | レシピ・道具 | ド素人の強い味方 ― レシピ設計と“道具選び”のAIコンサル術 | ◀ 第2回 |
| Vol.3 | 記録・販売 | 記録・段取り・販売まで ― これから広げるAI活用 | 📍 最終回 |
💬読者の声をお聞かせください
シリーズ全体へのご感想や、「こんなAI活用を知りたい」というリクエストをお待ちしています。

