【第2回】AIはド素人の強い味方! レシピ設計と“道具選び”のAIコンサル術

連載|養鶏農家・吉田さんの全卵ジェラート開発記
ド素人の強い味方

Vol.2 / 全3回

農家の声
実践

ド素人の強い味方

― レシピ設計と“道具選び”のAIコンサル術

#養鶏農家
#全卵ジェラート
#レシピ設計

レシピも、道具も、段取りも、何もかもが初めて。

愛媛で平飼いの卵と肉用地鶏を育てる養鶏農家・吉田さん。Vol.1では「全卵ジェラート」という差別化の発想を、AIと一緒に歴史までさかのぼって掘り下げた。商品の輪郭が見えれば、次はいよいよ中身づくりだ。

ところが吉田さんは、ジェラート製造については自ら「ド素人」と言い切る。そんな手探りのスタートで、いちばん頼りになった相談相手がAIだった。今回は、商品が形になっていく現場で、AIをどう“壁打ち相手”にしているのかを追う。

📌

この連載について

養鶏農家・吉田さんが、自慢の平飼い卵を「ジェラート」という専門外の商品に育てていく過程を、全3回で追う連載です。本人も「ド素人」と語るところからのスタート。だからこそ、AIをどう“壁打ち相手”にしながら一歩を踏み出したのか──そのリアルな実践を、これからAI活用に挑む農家のヒントとしてお届けします。

Vol.2のテーマド素人の商品づくりで、AIを“道具選び・段取り”の相談相手にする


吉田さん

吉田裕史

所在地
愛媛県
営み
平飼い卵・肉用地鶏の養鶏農家
挑戦中
自慢の卵を主役にした「全卵ジェラート」開発
🥚

① レシピは「鶏の餌設計」の応用だった

レシピ設計は、どう進めていったんですか?


吉田さん

吉田

成分のバランスをとっていくのが鶏の餌の配合と同じ感じで作れて。脂肪分や固形分、それからPOD(甘さの強さ)とPAC(凍りにくさ)が大事になってくるんです。

砂糖を入れると凍りにくく、なめらかになる。素材ごとに「甘さ」と「凍りにくさ」の数値が違うため、それらを組み合わせて狙った範囲に収めていく。

具体的には、どんなふうに数値を組み立てるんですか?

吉田さん

吉田

ショ糖の甘さと凍りにくさを1とすると、別の糖は甘さを0.7に抑えつつ、凍りにくさを1.9まで上げられる、というように数値が変わるんです。PODは12〜22、PACは22〜28あたりが最適と言われていて、そこを狙って設計しました。

この設計の土台になったのが、ジェラートのセミナーで配られた一枚の成分表だ。素材ごとの水分、脂肪分などに加えてPOD/PACが記載されている。吉田さんはこのデータをもとに鶏の飼料設計と同じ感覚で扱い、POD/PACのバランスを計算するスプレッドシートのフォーマットを自作した。AIを使ったのは、配布資料に載っていない原料の数値を調べて書き足す部分。あくまで型の隙間を埋める補助で、計算の主役はフォーマット自体だった。


セミナーで配られた素材データ
セミナーで配られた素材データ。これをもとに素材ごとのPOD/PACを組み合わせ、狙った範囲に収めていく。

AIが出す数値そのものは、どこまで信用していましたか?

吉田さん

吉田

レシピのほうは、正直あんまり数値を信用しきれなかった。

数字の最終判断は、あくまで人。レシピにおけるAIは“答えを出す主役”ではなく、足りないデータを補う脇役として割り切っている。

💡

読者へのヒント

数値や正解そのものをAIに出させようとすると、かえって信用しきれないことがある。強いのは、自分の“型”(吉田さんなら飼料設計の計算感覚+セミナーのデータ)を軸に据え、足りないデータだけAIで補うやり方だ。AIに丸投げせず、判断の主導権は自分が握る──そう割り切るほど、専門外の挑戦でも前に進みやすくなる。

🍦

② 一番便利だったのは「レシピ」より「道具選び」

AIで一番便利だったのは、どんな場面でしたか?

吉田さん

吉田

完全に素人の分野なんで、全部一から揃えていかなきゃいけない。どういう基準で選べばいいかも分からない。その辺をいろいろ相談しやすかったですね。

「何を買うか」の前に「どんな基準で選ぶか」が分からない──ド素人がいちばん詰まるこのポイントで、AIは“選ぶ物差し”を示してくれた。

💡

読者へのヒント

AIの使いどころは、答えを知っている分野より、むしろ“右も左も分からない分野”にある。「正解そのもの」ではなく「選ぶ基準・比較する観点」を聞くと、ゼロから揃えるときの迷いが一気に減る。「どれがいい?」より「選ぶときに見るべきポイントは?」と聞くのがコツだ。

🥚

③ 急冷の試行錯誤 ── 失敗も含めて

ジェラートの製造は大まかに、加熱殺菌とフリージングに分かれる。加熱殺菌後の原料は30度ほど。雑菌の繁殖を防ぐため、これを素早く10度以下に冷やす「急冷」が要る。最初に思いついたのは、梅酒などを漬ける果実酒の瓶だった。

最初は、どうやって冷やそうとしたんですか?

吉田さん

吉田

あれに入れて冷蔵庫に入れたらどうかなと相談したら、「厚手のガラス瓶だから冷えにくくて、逆に良くない」と言われちゃって。

次に、手持ちのステンレスバットを提案すると、「薄く広がるのでいい。バットの下に氷水を溜めて、撹拌しながら冷やせば一気に急冷できる」と返ってきた。ところが──

実際にやってみて、どうでした?

吉田さん

吉田

実際にやってみたら、あんまりうまくいかなかった。バットの中で不安定で零れそうだったんです。


急冷の方法をAIに相談したときのやりとり
急冷の方法をAIに相談したときのやりとり。提案→実践→再相談を往復した。

AIの提案がそのまま正解になるわけではない。試して、外して、また相談する。その往復のなかで、現場で使える答えに近づいていった。

💡

読者へのヒント

AIの提案は「最初の一手」であって「最終解」ではない。大事なのは、外れたときに“なぜダメだったか”(冷えにくい、安定しない等)を持ち帰って、もう一度相談すること。この「試す→外す→また聞く」の往復こそが、AI活用の精度を上げていく。一発で当てようとしないほうが、結局は早い。

🍦

④ 包装と道具の「あたりをつける」

容器だけではない。「業務用の袋を使わずに包装できないか」という相談からは、思わぬ答えにたどり着いた。

包装の方法は、どう決まっていったんですか?

吉田さん

吉田

袋を使わない包装の方法を相談していくうちに、市販のジップロックでいけることが、試行錯誤の末に分かったんです。

袋選びの基準は、AIにどう聞いたんですか?

吉田さん

吉田

厚さはどれぐらい必要か、密閉性はどうか。袋のサイズは12号から13号ですかね、みたいに相談しつつ。安いものをホームセンターで見つけて「これで行こうかな」と聞くと、おすすめされなかったり(笑)。

鍋のサイズでも相談したそうですね。

吉田さん

吉田

6リットルを一度に作りたいけど、手持ちの鍋では溢れてしまう。牛乳を3リットルまで減らして、卵や砂糖は全量入れて加熱しながらブレンダーにかけ、後から残りの牛乳を混ぜればいいんじゃないか、と提案したら、「それで濃縮乳加工になりますよ」とちゃんと返してくれて。


袋のサイズ・包装方法をAIに相談したときのやりとり
袋のサイズ・包装方法をAIに相談したときのやりとり。「選ぶ基準」と「あたり」を示してくれた。

ド素人が、ゼロから道具を揃えていくときの「選ぶ基準」と「あたり」を示してくれる。これがAIの最大の効用だったという。

💡

読者へのヒント

「これでいいかな?」と自分の案を持って相談すると、AIは賛否と理由を返してくれる。白紙で「何がいい?」と聞くより、“たたき台”を自分から出すほうが、議論が具体的になり判断も速くなる。ド素人の思いつきでも、まずぶつけてみる価値がある。

🥚

⑤ 「違うときは違う」と言ってくれるAIへ

AIに対する信頼感は、変わってきましたか?

吉田さん

吉田

昔のAIは、こっちに忖度して寄せてくる傾向があるなと思っていたんですけど。今はちゃんと、違っていたら「違います」って言ってくれるようになった。そこは逆に安心を感じましたね。

無条件に肯定するのではなく、根拠を持って「それは良くない」と返す。果実酒の瓶も、安い薄い袋も、ちゃんと止めてくれた。だからこそ、ド素人の相談相手として頼れる。AIは答えそのものではなく、考えるための“たたき台”を素早くくれる壁打ち相手──。そしてその壁打ちは、こちらに媚びず「違う」と言ってくれるからこそ意味がある。これは、この連載全体を貫くテーマでもある。

⚠️

読者へのヒント

相談相手としてのAIの価値は、「肯定してくれること」ではなく「根拠を持って否定してくれること」にある。提案がいつも“いいですね”で返ってくるなら、前提や条件をもっと具体的に渡してみよう。「ダメな理由」を引き出せて初めて、AIは本当の壁打ち相手になる。

🧾 まとめ:Vol.2で起きたこと

項目 内容
テーマ ド素人の商品づくりで、AIを“道具選び・段取り”の相談相手にする
レシピ設計 土台は自作の計算フォーマット(飼料設計と同じ感覚で扱う)。POD(甘さ)/PAC(凍りにくさ)を狙った範囲に設計(POD 12〜22/PAC 22〜28)。AIは資料にない数値の穴埋め役で、数値は人が最終判断
一番の効用 レシピより“道具選び”。「何を選ぶか」ではなく「どんな基準で選ぶか」を示してくれた
急冷の試行錯誤 果実酒の瓶(×厚くて冷えない)→ ステンレスバット(×安定せず失敗)。試して外してまた相談
包装・道具の相談 袋なし包装は試行錯誤の末ジップロックに。袋は12〜13号・厚み・密閉性で選ぶ。安物は止められ、6L問題は「濃縮乳加工になる」と提案される
信頼感の変化 忖度するAIから、「違うときは違う」と根拠で返すAIへ。その誠実さが頼れる理由

5分で試せるアクション:いま迷っている“道具・やり方”を、AIに「選ぶ基準」ごと相談してみよう

  1. 専門外で「何を買えばいいか分からない」道具・サービスを1つ挙げる
  2. AIに「これを選ぶとき、見るべき基準・比較ポイントは?」と聞く
  3. 自分の候補(安い物・手持ちの物でOK)を出して「これで大丈夫?」と確かめる

“正解”を聞くより“選ぶ基準”を聞くほうが、ド素人の一歩は踏み出しやすくなる。

🔜 次回予告(Vol.3)

記録・段取り・販売まで ― これから広げるAI活用

商品が形になってきたら、次は“続けて売る”ための仕組みづくり。自動シール印刷の検討、HACCP対応の記録管理、加熱殺菌を織り込んだ製造計画づくり、そして販売やコミュニティとの連携まで──これから吉田さんが広げていこうとしているAI活用の構想を伺います。

📂 シリーズナビ(全3回)

# テーマ タイトル ステータス
Vol.1 歴史・着想 なぜ“全卵ジェラート”は存在しないのか ― AIと辿る卵とジェラートの歴史 ◀ 前回
Vol.2 レシピ・道具 ド素人の強い味方 ― レシピ設計と“道具選び”のAIコンサル術 📍 今回
Vol.3 記録・販売 記録・段取り・販売まで ― これから広げるAI活用 🍦 公開予定

💬読者の声をお聞かせください

シリーズ全体へのご感想や、「こんなAI活用を知りたい」というリクエストをお待ちしています。




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