なぜ“全卵ジェラート”は存在しないのか
― AIと辿る、卵とジェラートの歴史
「養鶏農家がジェラート?」
愛媛で平飼いの卵と肉用地鶏を育てる養鶏農家・吉田さん。いま取り組んでいるのは、自慢の卵を主役にした「全卵ジェラート」づくりだ。卵の生産者だからこそ挑める差別化──その出発点は、AIに投げかけた素朴な問い「なんで、白身は使われていないんだろう?」だった。
今回は、なぜ“全卵ジェラート”がこれまで日本に存在しなかったのか。その謎を、吉田さんがAIと一緒に歴史までさかのぼって解き明かしていく過程を追う。
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この連載について
養鶏農家・吉田さんが、自慢の平飼い卵を「ジェラート」という専門外の商品に育てていく過程を、全3回で追う連載です。本人も「ド素人」と語るところからのスタート。だからこそ、AIをどう“壁打ち相手”にしながら一歩を踏み出したのか──そのリアルな実践を、これからAI活用に挑む農家のヒントとしてお届けします。
Vol.1のテーマ常識の“理由”を、AIで歴史までさかのぼって解き明かす

吉田裕史
①「美味しいのが作れる」── 小さな試作から始まった
ジェラートづくりは、どんなきっかけで始まったんですか?

吉田
個人用の家庭用の、500mLぐらいしか作れない機械を買って試しに作ってみたら、本当に美味しいのができたんです。やっぱり美味しいのが作れるんだなっていうので、自分で製造するのを目指して動いていました。
初期投資の壁はどう乗り越えたんですか?

吉田
一番最初は機械だけで1,000万とか言っていたのが、3分の1近くまで下げられて。フリーザーやショックフリーザーを展示品で安く調達できて、リース込みの総額は400万円ほどに。補助金は「待っているとかえってネックになる」と判断して、使わずにスタートしました。
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読者へのヒント
新しい設備投資は「最新の一体型を新品で」と考えると、一気にハードルが上がる。だが展示品・中古・リースまで視野を広げると、同じゴールでも投資額は大きく変わる。“いくらかかるか”を決める前に、“どんな調達ルートがあるか”をAIや業者に洗い出してもらうと、止まっていた計画が動き出すことがある。
② 卵生産者だからこその「全卵」という発想
なぜ、卵黄だけでなく「全卵」にこだわったんですか?

吉田
せっかく卵の生産者なんで、全卵で、白身の方も使ってという感じで行こうかなと。じゃあ、なんで白身が使われてないんだろうって、AIで調べていったんです。
「白身を使わないのが当たり前」という常識への、生産者ならではの違和感。この小さな“引っかかり”が、企画全体の核心になっていく。
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読者へのヒント
AIに投げる良い問いは、たいてい現場の“引っかかり”から生まれる。「なぜ、みんなこうしているんだろう?」という素朴な疑問こそ、自分の強みを差別化に変える入口になる。答えを聞く前に、まず“違和感”を言葉にしてAIにぶつけてみる価値がある。
③ AIと辿った「卵とジェラートの歴史」
AIと一緒に、卵とジェラートの歴史を調べたそうですね。何がわかったんですか?

吉田
中世ごろまでは、卵は固める・安定させる役割で普通に使われていた。ところがローカストビーンガムみたいな植物性の安定剤が使えるようになると、「白身がなくても大丈夫だよね」という流れに。日本にジェラートが伝わったときには、白身を使っていない状態で伝わった。だから日本語でいくら調べても、白身を使ったジェラートが出てこないんです。

「全卵ジェラートが存在しない背景」が、歴史をたどることで見えてきた。裏を返せば、ここにこそ差別化の余地がある。常識の“理由”を知ることは、その常識を超える設計図を手にすることでもある。
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読者へのヒント
AIは「目の前の作り方」だけでなく、「なぜ今のやり方になったのか」という背景・歴史をたどる相棒にもなる。“当たり前”の由来がわかると、それが今も有効な制約なのか、もう外せる古い制約なのかを見極められる。差別化のヒントは、たいてい歴史の中に埋まっている。
④ 2つのデメリットと、それを越えられる理由
白身を使わない理由は、そもそも何だったんですか?

吉田
ひとつは食感です。殺菌のときに熱で固まっちゃうと、ボソボソの食感になって使いづらい。これが最大のデメリットでした。
それを、どうやって克服したんですか?

吉田
最近の機械だと加熱の温度管理がしっかりしているので、ボソボソになるような温度にそもそもならない。しっかり、ゆっくり加熱して低温を保てるので、安定剤としては全然使えるよ、と。もうひとつの硫黄のような匂いも、うちの卵は臭みとかが全然出ていないんで。その2つとも問題がクリアできたね、と。
「白身も使う全卵ジェラート」という、これまで日本になかった商品の輪郭が見えてきた。
いまの立ち位置を、どう捉えていますか?

吉田
クラシカルな製法に戻りつつ、しかもそれをAIや最新の機械を使ってやっていく。面白い立ち位置になったなって思っています。
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読者へのヒント
「だからできない」とされてきた理由も、分解すると“昔の道具が前提だった制約”であることがある。①そもそも自分の素材なら起きない問題か、②今の機械・技術で回避できる問題か──と切り分けると、「常識のデメリット」が「自分だけの強み」に反転することがある。
⑤ AI活用のリアル ──「どこまで本当か」は残る
AIの答えは、どこまで信じていますか?

吉田
出てきた情報が、どこまで本当なのか。文献になってくると調べようがないんで、印象の域は出ないんですけど。
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読者へのヒント
AIの回答、とくに歴史や文献の話は、裏取りができないこともある。だからこそ「そのまま信じる」のではなく、「仮説をくれる相手」と捉えるのが安全だ。最後に判断するのは、現場を知る自分自身。この距離感を持てるかどうかが、AIを賢く使えるかの分かれ目になる。
🧾 まとめ:Vol.1で起きたこと
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| テーマ | なぜ“全卵ジェラート”は存在しないのか──AIで「常識の理由」を解き明かす |
| きっかけ | 家庭用機械での試作。「本当に美味しいのができた」 |
| 投資の壁 | 当初は機械だけで1,000万円 → 展示品の活用でリース込み総額400万円ほどに圧縮。補助金は使わず、物販中心でスタート |
| 着想 | 卵生産者だからこそ「白身も使う全卵」。「なぜ白身は使われないのか」をAIに質問 |
| AIの仕事 | 卵とジェラートの歴史をたどり、「植物性安定剤の普及 → 白身不要 → 日本へは黄身のみで伝来」という背景を提示 |
| 2つの壁とその克服 | ①熱でボソボソ → 最新機械の精密な温度管理で回避 ②硫黄臭 → 吉田さんの卵は臭みが出ず問題なし |
| 立ち位置 | クラシカルな製法 × AI × 最新機械 |
| AIとの距離感 | 文献の真偽は確かめようがない。AIは入り口、最後に決めるのは生産者自身 |
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5分で試せるアクション:自分の商品の“当たり前”を、ひとつAIに問い直してみよう
- 自分の作物・商品で「みんなこうしている」と思っていることを1つ書き出す
- AIに「なぜ一般的にこうなっているのか、その歴史的・技術的な理由は?」と聞く
- 返ってきた理由を見て、「自分の素材・設備なら、その制約は外せないか?」と重ねて聞く
“当たり前の理由”がわかると、それを超える余地=差別化の入口が見えてくる。
📂 シリーズナビ(全3回)
| # | テーマ | タイトル | ステータス |
|---|---|---|---|
| Vol.1 | 歴史・着想 | なぜ“全卵ジェラート”は存在しないのか ― AIと辿る卵とジェラートの歴史 | 📍 今回 |
| Vol.2 | レシピ・道具 | ド素人の強い味方 ― レシピ設計と“道具選び”のAIコンサル術 | 🍦 公開予定 |
| Vol.3 | 記録・販売 | 記録・段取り・販売まで ― これから広げるAI活用 | 🍦 公開予定 |
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