農家のためのCloudflare入門~圃場の写真を日誌に紐づける~
「あの写真、どこにいった」を、追加0円で終わらせる
「去年の今ごろ、この木はどうだったか」。
スマホを開いて、写真をさかのぼります。子どもの運動会、直売所の値札、農機の型番、圃場、また運動会。撮った日は覚えているのに、探せない。5分さかのぼって、あきらめる。
前回、作業日誌の台帳ができました。今日はその1行に、写真をつけます。「6月10日 東の畑 防除」の横に、その日の葉の写真が1枚ある。それだけで、日誌は記録から証拠に変わります。
使うのは写真の倉庫(R2)。ここが、この連載でいちばん農業に効く売り場です。理由は1つ、倉庫から写真を取り出すのにお金がかからないから。何回見返しても、家族に見せても、取引先に送っても、取り出しは0円です。追加費用は今日も0円。
今日のゴールは「写真を上げられた」ではありません。
3日後に日誌の一覧を開いて、その写真がちゃんと出てくるところまでです。

日誌の入力画面に「写真を選ぶ」が1つ増えるだけ。項目は増やしません
撮った写真は倉庫(R2)に入り、日誌の行と結びつく
一覧では小さく、押すと大きく。何回開いても取り出しは0円
家族にURLを送れば、同じ写真が見られる(鍵はまだありません。Vol.7でかけます)
追加費用は0円。ただし今回だけ、「置いておく量」には無料枠の上限があります(後半の「かかったお金」で正直に書きます)。今日もクレジットカードは出しません。
※無料枠の条件は 2026-08-16 に公式で確認
| 売り場(Cloudflare) | 農場でいうと | 今日の役割 |
|---|---|---|
| DNS / Static Assets | 住所と、直売所の看板 | Vol.2で設定済み。今日は触りません |
| Email Routing | 屋号あての郵便受け | Vol.3で設定済み。今日は触りません |
| Workers | 何でも屋の店員(番頭) | Vol.4で雇用済み。仕事を1つ足す(写真を倉庫に運ぶ) |
| D1 | 作業台帳・帳簿棚 | Vol.4で設置済み。列を1つ足す(写真の置き場所を書く欄) |
| R2 | 写真の預かり倉庫 | 今日つくる場所。写真そのものが入る。取り出しは無料 |
| Turnstile | 直売所の入場ゲート | 次回(Vol.6)。予約フォームのいたずら対策 |
13ある売り場の全体像は Vol.1の一覧表 にあります。グレーが4行になりました。増築は、更地に建てるよりある建物に部屋を足すほうが速い——今日はそれが実感できる回です。
📷 写真が行方不明になるのは、日付でしか探せないから
スマホの写真アプリは、時系列でしか並びません。だから探すときはこうなります。
- いつ撮ったかを先に思い出す必要がある:「たしか梅雨入り前」から始まるので、そこで止まります
- 圃場ごとに分かれていない:東の畑と川向こうが同じ列に混ざり、運動会も混ざります
- なぜ撮ったのかが残らない:半年後の自分は、その葉の写真を撮った理由を覚えていません
3つとも、写真の側では解決しません。解決するのは日誌の側です。前回つくった「日付・圃場・作業・メモ」の1行に写真をぶら下げれば、圃場から探せる・作業から探せる・メモを読めば理由が分かる。今日やるのは、それだけです。
🏚 写真倉庫(R2)は、台帳とは別の建物です
ここで1つ、勘違いしやすいところを先に潰します。写真は台帳(D1)には入りません。
🌾 農業の現場でたとえると
台帳(D1)は帳簿です。帳簿に写真を貼り付けると、めくれないほど分厚くなります。だから帳簿には「写真は倉庫の3番棚」と書くだけにする。
倉庫(R2)が写真の現物置き場です。番頭は写真を受け取ったら倉庫へ運び、棚の番号だけを帳簿に書き戻します。
見るときは逆順です。帳簿で棚番号を見て、倉庫から出してくる。この往復を、押した人は意識しません。
今日の写真は、この3段で動きます。
日誌の入力画面で写真を1枚選ぶ。その場で小さく縮めてから送ります
WorkersがR2へ入れ、棚番号(置き場所)だけを台帳に書き戻す
一覧を開くたびに番頭が取りに行く。この往復に料金はかかりません
大事なのは3段目が毎回起きることです。写真は「1回入れて終わり」ではなく「何十回も出す」もの。だから出すお金が0円かどうかが、農業では効きます。次の章はその話です。
💴 「出すお金」で比べると、写真の置き場は別物になる
クラウドの料金は、多くの人が「置いた量」で決まると思っています。実際には、写真のように何度も見返すものでは、「出した量」のほうが効いてきます。
| お金のかかり方 | 置いておく(保存) | 取り出す(見る・送る) |
|---|---|---|
| R2(今日つくる倉庫) | 無料枠あり。超えた分は容量で課金 | 0円(何回見ても増えない) |
| 一般的なクラウド保存サービス | 同じく容量で課金 | 1GBあたり【要確認:公開前に単価を記入】 |
| 農園での効き方 | 写真は増え続ける。ここは両者とも同じ | 見返す・家族に見せる・取引先へ送る。ここで差がつく |
単価は変わります。【要確認】の数字は、つくる日に公式ページで確認して入れてください。ただし「取り出しが0円かどうか」という構造の差は、単価が動いても変わりません。
自分の農園の数字で試算します。牧場のカメラ×AI通知を回したときの実測ログが43日で2,347件ありました。これを1枚2MBの写真として置き換えると、こうなります。
| 期間 | 枚数 | 置いておく量(1枚2MB) |
|---|---|---|
| 実測(43日) | 2,347枚 | 約4.7GB |
| 1か月あたり | 約1,600枚 | 約3.3GB |
| 1年続けると | 約2万枚 | 約40GB |
これはカメラが自動で撮り続けた場合の数字です。手で撮る日誌写真なら1日数枚——年間で1〜2GBに収まります。自動で撮るか、手で撮るかで、桁が2つ違う。ここを最初に決めておくと、あとで慌てません。
写り込みを、上げる前に一度だけ確認してください。
この日誌はまだ鍵がかかっていません(鍵はVol.7)。文字だけなら「直売所渡し 5kg」と書き換えれば済みましたが、写真は書き換えられません。
上げる前に見るのは3つです。人の顔・車のナンバー・他人の敷地や表札。圃場の作物と自分の農機だけなら問題ありません。作業風景を撮るときは、手元だけを写すと決めておくと迷いません。
もう1つ。倉庫(R2)は「公開する」設定にしないでください。公開すると写真のURLを知られた人が直接開けてしまい、Vol.7で鍵をかけても写真だけが鍵の外に残ります。写真は必ず番頭(Worker)経由で出す——これが今日いちばん大事な設定判断です。
🙋 今日できないことも、先に言います
🔀 倉庫を持たない選択も、同じ厚さで
正直に言うと、今日の回は飛ばしても日誌は使えます。だから別解も本気で書きます。
写真も自分の名義の場所に入ります。日誌と同じ管理画面で完結し、Vol.7の鍵、Vol.9のAI要約、Vol.10の引っ越しが写真ごとまとめて効きます。
- 倉庫(R2)をつくって、番頭と結ぶ
- 台帳に「写真の置き場所」の列を1つ足す
- 3日後に日誌を開いて、写真が出ることを確認する
追加費用は0円。今日の記事はこちらの手順です。
Googleフォトなどですでに共有アルバムを運用できているなら、日誌のメモ欄にそのリンクを貼るだけでも「探せる」は達成できます。30分で終わります。
- 圃場ごとにアルバムを分け、日誌のメモにリンクを貼る
- 共有設定が「リンクを知っている人」から絞れているか必ず確認する
- ただしアカウントを移した日にリンクが切れる——ここだけは覚悟しておく
写真が他人の敷地にある状態は続きます。名義で持ちたくなったら本線へ戻ってきてください。
🗣 AIへの依頼の仕方
手順はコードではなく日本語で相棒(Claude CodeなどのAI)に頼む言い方で渡します。1本目はこれだけです。屋号とドメインを書き換えて、あとはそのまま。
この日誌に、写真を1枚つけられるようにしたいです。写真の置き場はCloudflareのR2でお願いします。
次の条件でお願いします。
・入力画面に増やすのは「写真を選ぶ」の1つだけにしてください(他の項目は増やさないでください)
・写真は送る前にスマホ側で長辺1600pxに縮小してから上げてください。元の写真はスマホに残したままにしてください
・R2のバケットは公開設定にしないでください。写真は必ずWorkers経由で表示する形にしてください
・一覧では小さく表示し、押すと大きく見られるようにしてください
・写真をつけない日誌も、これまでどおり保存できるようにしてください
・私が管理画面で押すボタンと、その画面名を、順番に番号で示してください
・専門用語が出たら、その場で一言だけ日本語で説明を添えてください
・お金が発生する操作の直前では、必ず「ここから有料です」と止めてください
・作り終わったら、テストで1枚上げて、3日後にまた開いて表示されることを確認する手順を教えてください
・写真だけが表示されないときに見る場所を、最後に3つだけ挙げてください
2本目は落ち着いてからで十分です。スマホに溜まっている過去の写真を拾い上げるお願いです。
・写真の撮影日を見て、同じ日付の日誌があればその行に付けてください
・同じ日に複数枚ある場合は、どう扱うかを先に相談してください(全部つけるか、1枚だけか)
・日誌が無い日の写真は、いったん保留にして一覧で見せてください。勝手に日誌を作らないでください
・取り込む前に、いま倉庫に入っている枚数と容量を教えてください
・同じ写真を二重に入れないための確認方法も教えてください
・失敗したときに戻せるよう、取り込む前の状態を控える手順を最初に入れてください
頼み方のコツは3つ。①項目を増やさせない ②送る前に縮める ③公開設定にしない。とくに③です。ここを言わないと、いちばん簡単な「公開する」設定で組まれてしまいます。
🖥 実際の画面で見る手順
今回も、私が実際に通した6つの画面を並べます。前回と違うのは、新しい売り場(R2)に行くのは最初の2画面だけで、あとはVol.4で見た画面に戻ってくることです。
①②が倉庫(R2)=写真を置く場所を作る。③が台帳(D1)=Vol.4で見たConsoleに戻って、列を1つ足す。④⑤で番頭に倉庫を紐づける=Vol.4の DB と同じ要領で、今度は写真用の名前を1つ増やす。
前回の設定を思い出す必要はありません。③〜⑤は、Vol.4で一度通った画面とまったく同じ場所です。2回目なので、前回30分かかった人も10分で終わります。
①② 写真倉庫(R2)をつくる
左メニューの「R2 Object Storage」を開きます。ここが倉庫の売り場です。

名前を決めます。屋号のローマ字+用途で十分です(例:funabashi-photos)。場所はAsia Pacificのままでかまいません。

③ 台帳に「写真の置き場所」の列を1つ足す
Vol.4で使ったD1のConsoleに戻ります。日誌の棚に、写真の置き場所を書く欄を1つ足すだけです。相棒が渡してくるSQLを貼ってExecute。

④⑤ 番頭に、倉庫の場所を教える(Bindings)
Vol.4と同じ画面です。番頭を開いて「Bindings」→「Add binding」、今度は一覧から「R2 bucket」を選びます。

PHOTOS。前回の DB を上書きしないでください前回 DB という名前で台帳を紐づけました。今回はそれを消さずに、2つ目として PHOTOS を足します。
ここを間違えて DB の行を編集してしまうと、写真は入るのに日誌が保存できなくなります。しかも保存ボタンは押せてしまうので、気づくのが翌日になります。
名前を変えたい場合は、コード側の呼び名も一緒に変える必要があります。相棒には「Variable name を〇〇にしたので、コードもそれに合わせて」と伝えれば通ります。
Overviewに戻ると、右側の「Bindings」にDB と PHOTOS の2行が並びます。2行あることを目で見てから、次に進んでください。
この2行が、今日の増築の証拠です。番頭は帳簿と倉庫の両方の鍵を持ちました。あとはEdit codeで写真対応のコードに差し替えてDeployするだけです。

差し替えたら、スマホで日誌を開いて写真つきで1件保存してください。そして今日はもう閉じます。今日のゴールは押せたことではなく、3日後に開いて写真が出ることです。
☁️ コラム:よくある2つの誤解
誤解⑦:クラウドの料金は、置いた量で決まる。倉庫代だけを見て選ぶと、運賃で足が出ます。農産物と同じです。保管料が安い倉庫でも、出荷のたびに運賃を取られたら意味がない。写真は「1回入れて何十回も出す」荷物なので、運賃(取り出し)が0円かどうかで年間の金額が変わります。R2が農業に効くと言い切れるのは、この一点です。
誤解⑧:写真は高画質なほどいい。日誌の写真の目的は「その日を思い出せること」であって、印刷でも品評会でもありません。長辺1600pxまで縮めれば容量は5分の1、それでも葉の色も病斑も判別できます。元の高画質はスマホに残しておけばいい。倉庫に運ぶのは、日誌用の軽いほうだけです。
🧱 ここで詰まった
💸 かかったお金
ここがR2の一点突破です。家族に見せても、取引先に送っても、去年の写真を全部見返しても、取り出しでは請求が増えません。他社なら1GBあたりの単価がかかる部分です。
1日数枚・長辺1600pxなら、年間で1〜2GB程度。数年ぶん貯めても無料枠に収まります(上限の数字は変わるので、つくる日に公式で確認してください)。
実測では43日で2,347件=年間約40GB。ここまで来ると保存の無料枠を超え、容量に応じた月額が発生します。連載で初めて「機能」ではなく「量」が引き金になる回です。超えたかどうかの見方はVol.10の月次点検で扱います。
✅ まとめ
写真が探せないのは撮り方の問題ではなく日付でしか並んでいないから。日誌の行にぶら下げれば、圃場からも作業からも探せる
写真は台帳(D1)ではなく倉庫(R2)に入り、台帳には置き場所だけが書かれる。番頭が毎回その往復をする
R2は取り出しが0円。何度見返しても増えない。ただし置いておく量には上限がある——今回だけ引き金は「機能」ではなく「量」
倉庫は公開設定にしない。写真は書き換えられないので、顔・ナンバー・他人の敷地だけは上げる前に確認する
- スマホの写真アプリで「先月」を開いて、圃場の写真が何枚あるか数える。10枚以上あれば、今日の記事はあなたの回です
- その中から3枚選んで、なぜ撮ったのかを一言ずつ書いてみる。思い出せなかった写真が、いま行方不明になっている写真です
- 撮るときのルールを1つだけ決める。おすすめは「圃場の写真は、必ず看板か目印を入れて撮る」。あとで場所が分かります
- 余裕があれば、上のプロンプトをコピーして屋号とドメインを書き換えるところまで。押すのは明日でいいです
Vol.1やる/やらないを決めた(売り場マップ・向かないもの4つ・お金の境界2本)
Vol.2屋号のドメインで開く1ページを公開した(年10ドル前後)
Vol.3屋号のアドレスで受けて、いつものGmailに転送した(0円)
Vol.4スマホから入れて、翌日も残る作業日誌をつくった(0円)
Vol.5今回:圃場の写真を、日誌の1行に紐づけた(0円)
Vol.6直売の予約を、同じ台帳で受ける
Vol.7日誌と予約一覧に、家族だけの鍵をかける
Vol.8毎朝のまとめを自動で届ける(ここで月5ドル)
Vol.9日誌をAIに要約させ、請求に上限をつける
Vol.10月次点検と、書き出し・引っ越しの手順
途中から読んでいる方へ。今日の写真はVol.4でつくった日誌に紐づきます。先に Vol.1(やる/やらないの判断) と Vol.4(消えない作業日誌) を済ませてから戻ってきてください。
- Vol.1デジタル版ホームセンターの歩き方
- Vol.2自分の屋号でURLを持つ
- Vol.3屋号のメールアドレスを持つ
- Vol.4消えない作業日誌をつくる
- Vol.5圃場の写真を日誌に紐づける
- Vol.6直売の予約をネットで受ける近日
- Vol.7予約一覧に家族だけの鍵をかける近日
- Vol.8毎朝のまとめを自動で届ける近日
- Vol.9AIの請求に上限をつける近日
- Vol.10毎月の点検で、静かな故障を見つける近日
📣 読んだ感想・質問をお寄せください
「ここが分からなかった」「うちの場合はどうか」——次回以降の内容に反映します。
写真は、いちばん嘘をつかない記録です。その年の天気も、木の勢いも、自分がどこで手を抜いたかも、あとから全部写っています。
問題は、それが探せない場所にあったことでした。今日で、写真は日付の海から出て、作業の隣に並びました。来年の同じ日に、去年の同じ圃場の写真がすぐ出てくる。比べられるということが、農業では判断そのものです。
次回から、この農園にお客さんが来ます。
本記事に記載した料金・無料枠の条件は 2026-08-16 時点で公式ドキュメントを確認したものです。R2の無料枠(保存容量・操作回数)や他社サービスの転送料金は変更される場合があります。実際につくる前に必ず公式の最新情報をご確認ください。転送量の試算は自農園での実測(43日・2,347件)と「1枚2MB」の仮定に基づくもので、環境により変わります。

